君との想い出が風に乗って消えても(長編・旧)



 か……加恋ちゃん……⁉


 気付いてたの⁉


 僕が……僕が……加恋ちゃんに……水を……口……移し……で……飲ませた……ことに……。


 そう思ったら僕は急に顔から火が出るくらいに血が上ってきた。


「……優くん……?」


 僕は加恋ちゃんの呼びかけに返事ができなかった。


「……優くん……?」


 このままでは加恋ちゃんのことを無視しているみたいになってしまう。

 そう思った僕は声を振り絞って……。


「あ……あれは……その……」


 そんな言葉しか出なかった。


 僕は、そんな言葉しか出なかった自分に慌ててしまった。


 そのとき……。


「優くんがペットボトルの口をわたしの口に入れてくれたんでしょ」


 ……え……?


「……優くん……?」


「……あっ、うん、そうだよ。よかったね、ちゃんと飲むことができて」


「優くんが上手にペットボトルの口をわたしの口に入れてくれたおかげだよ」


「そんなことは……」


「本当にありがとう、優くん」


「い……いいよ、お礼なんて……」


 加恋ちゃん……気付いてなかった……かな……?


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