君との想い出が風に乗って消えても(長編・旧)
「草野くん‼」
僕の後ろから花咲さんの声が聞こえた。
僕は花咲さんの声に足を止めた。
「よかった、追いついて」
「花咲さん」
「廊下は走っちゃいけないことはわかってるんだけど少し走っちゃった」
少し頬をピンク色に染めながら花咲さんがそう言った。
「花咲さん、どうしたの?」
そんな花咲さんの様子を見て少し驚いている、僕。
「私にもノート、半分持たせて」
「え……?」
花咲さんがそう言ってくれて嬉しかったけど、少しだけ戸惑いもあった。
「ねっ」
笑顔の花咲さん。
「え……でも……」
戸惑いを隠し切れない、僕。
「私は草野くんの隣の席でしょ。だから私も日直だよ」
確かに花咲さんの言う通り、花咲さんは僕の隣の席だから花咲さんも日直なのだけど……。
「でも、花咲さんは今日転校してきたばかりだから……」