浅葱色の約束。─番外編─
「梓、」
縄を外して着崩れた着物を直してやる。
髪も濡れており、冷えたように身震いをした。
「…何もされてねえか」
返事はない。
何もされてないわけがねえだろう。
されたから、こうなってんだ。
ただそんな中でも唯一安心したのは、幸い着物を全て脱がされる寸前に間に合ったことだった。
あと少しでも遅くなってたらどうなっていたか、そう考えるとやはり斬っておいた方が良かったとも思っちまう。
「遅くなって悪かった」
梓はただ茫然と俺を見つめ、そしてだんだん感覚が追い付いてくると。
そいつは震える手で俺の着物をぎゅっと掴んだ。
「ひじかた、さん…」
震えている。
今までにないくらい、震えている。
抱き締めてやればいいか、優しく問いかけてやればいいか。
外から聞こえる鈴虫の鳴き声に上手く対応が出来なかった。
そしてこいつが何かを俺に必死に訴えて来ているみたいで。
「あいつはもう来ない。もし次来やがったら、死に際間近の拷問の上で俺が斬ってやる」