浅葱色の約束。─番外編─
「ただ、俺はいつかこうなるんじゃねえかとも思ってた」
「え…、」
「あの頃の俺は必死でよ。近藤さんただ1人が局長の体制になったばかりで、」
俺はもちろんあの人を掲げるまでは死なねえと思ってたから、いつかこのガキ残ったら俺が引き取る羽目になるんじゃねえかって。
いつも面倒事を押し付けられるのは俺だからな───。
「だが誤算だったな。いつの間にか俺がお前を必要としてたよ」
土方さんは微かに笑う。
やっぱりこの人は私が喜ぶ言葉を知っている人だ。
「あのとき…追い返さなくて良かった」
あの日の巡察が近藤さんで良かった、近藤さんが拾って来てくれて良かった。
空き部屋が1つあって良かった───。
そんな言葉を並べる土方さんは、私の頬を優しく撫でた。
なんか土方さんじゃないみたい…。
「…多恵のとき、あったろ」
その名前が上がるとは。
少し、嫌だ。
忘れるわけがない。
私は初めて土方さんの女付き合いのだらしなさをこの目で見たんだから。