浅葱色の約束。─番外編─
でもね、その日は変だったの。
「いつもより酷くなくて…“痛い”って思ったんだ」
いつも思わないのに変だなって思って。
何故かいつも通らない道を通って。
目の前に親子がいて、そんな親子の会話をずっと見つめてた。
たぶん、私……
「───…羨ましかったんだと思う」
いいなぁって思ってた。
お母さんがいて「今日のご飯はなぁに?」って聞いて。
「好きなもの作ろうか」なんて返ってきて。
「そう思ってたら、気付いたら事故に遭いそうになってたその女の子を追いかけて……自分も飛び出してた」
そしたら轢かれちゃって、目を覚ましたらこの時代に来てた。
本当に不思議すぎて今でもたまに思うんだよ。
「ぜんぶ、夢なんじゃないかって」
そんなこと何ひとつ無いって、いつか本当に消えてしまうんじゃないかって。
そう思ったら怖くて怖くて堪らない。
「近藤さんに出会ったとき、ここは天国だって思った…」
「天国…?」
「うん。だからみんな優しくしてくれるんだ…って」
私の言葉をちゃんと聞こうとしてくれて。
私の名前を当たり前のように呼んでくれて、その優しさが夢のようで。
本当に夢みたいだったから…。