浅葱色の約束。─番外編─
思い出すのは、すごく夜で。
暗い場所に連れて来られたはずなのに、腕を組んで待ち構えていた人は妙にはっきりと見えて。
「それがどういう意味かは分からねえが、知らないことを教えて、こいつが見たことも無いようなモンを見せてやりたい…ってな」
なんて綺麗な人なんだろうって。
私はあのとき、あの瞬間に、神様を見たような気持ちになっていた。
「土方さん…私…、ずっと自分の苗字が嫌いだったの」
捨てられた身だから、ただそれでも普通に生きれるように適当に付けられたんだって。
ずっとそう思ってた。
でも今は違うよ。
『…梓です。…とき、……土方、梓』
あのとき嘘だとしても言った言葉が、本当になっちゃうなんて。
今は私は“土方”だから。
「土方 梓、」
優しい顔をして呟いてくれるから、コクンと返事をする。
私、この苗字も名前も……大好き。
「土方さん、───…だいすき。」
両手を広げると、すぐに抱きしめてくれる。
「…俺もだ。」
甘く囁いて、私をそのまま抱えるように抱き上げて立ち上がった。
ぎゅっと、その白い首筋に顔を埋める。