浅葱色の約束。─番外編─




「あとは…お吸い物を作って、それで───…」



気づけば腕の中。


なにも言葉を言わず、感情のまま、本能のまま。

どうしようも出来ない葛藤をぶつけるように、私を抱き締めた。

その腕は明らかに震えていて。


もう、今回は本当に駄目かもしれない…。



「…歳三さん、苦しい」



咲ちゃんはどこに居るか分からない。

彼女の身に何か危険なことがあったとしても助けてあげられない。


ただ、その時間を待つことしか出来ない。


これが時間を狂わせてしまった罰だとしたなら、どんなに幸せなんだろうって馬鹿みたいなことを思った。



「風邪だろう、これは。んなモン俺に移しちまえ」


「…ご飯…、一緒に食べたいなぁ…」



最後にご飯を作ってあげたい。
それで一緒に食べられれば、それでいい。

でも今、大好きな人の腕の中で消えていける。独りぼっちじゃない。


それだけで幸せを感じている私がいた。



「私、毎日楽しかった……、本当に…ありがとう…」


「…ふざけんな、今生の別れみたいに言ってんじゃねえよ」



でもね、行けたんだよ土方さん。


海のずっとずっと先は、もう私達の目の前にあるんだよ。

土方さんは本当にそこへ連れて行ってくれた。


そう言いたいのに、体はどんどん透けてしまっている。



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