浅葱色の約束。─番外編─
「今日は家帰ったらお前の飯食って、少し酒でも呑もうかと思ってんだ」
「…私たち下戸なのに」
「たまにゃいいだろう」
もう土方さんも私を触れられてはいない。
それでも変わらず抱き締めてくれている。
「…置いて行くのか、俺を」
「土方…さん…、」
「お前まで……俺を残して消えちまうのか」
彼の初めての弱音。
ポロポロ涙が溢れて止まらなくて、そんな自分が今は嫌だった。
涙を堪えるのは得意だったのに。
泣きたいのはあなたのはずなのに。
いつの間にかこんなにも脆くなっていたなんて。
「ごめんね歳三さん…、本当に…ごめんなさい…っ」
ずっとここに居れると思ってた。
もうこの時代の人間になっていた。
土方さんが隣にいる今、これ以上もこれ以下も無いって。
それだけが最高に幸せだったから。
「やっぱり時間には…抗えないのかなぁ…」
今度は私が彼の前から消える番───…
「また…殴られ屋に戻っちゃうのかなぁ……っ」
私の考察は多分、半分も当たっていないように思う。