浅葱色の約束。─番外編─
───ガラガラガラ。
静かに開けて、ピシャンと閉じる。
どうやらまだ気付かれていないらしい。
どんな反応をしてくれるか、心臓はドキドキとうるさかった。
『どうしたら大人の女性になれますか…?』
お化粧をしてくれた女に、私はそんなことを聞いていて。
慣れた手つきで筆を動かす指に視線が奪われつつ、その先の女は妖艶に微笑んでくれた。
『なんだい?あんた、大人になりたいのかい?』
『は、はい…』
『そりゃ簡単だよ。女になりゃいいのさ』
それが彼女からの答えだった。
正直よくわからない。
だからこそもう少し聞いてみれば、分かりやすいように追加してくれた。
『男を頼って守られる女になればいいのよ。十分に甘えて気持ちを伝えるの、それだけで男にとって一番の幸せさ』
それはある意味私にとって一番に難易度の高いもの。
女になればいい───だなんて。
土方さんの中で私は男の子であり、まだ女になりきれていない少女のようなものだと思うのだ。
大人というものがまだ分からない。
そう見て欲しいのに、それでも私はまだ足りな過ぎる。
でも鏡に映る今の姿を見たとき、私は自分を初めて“女”だと思った。