浅葱色の約束。─番外編─
「…言葉が出ねえモンだな」
「そ、そんなに酷いですか……」
「女を前にして口説き文句の1つすら言えなかったのは初めてだ」
益々意味がわからない。
思わず首を傾げた私に、土方さんは近付いてくる。
「わっ…!」
ひょいっと横抱きに軽々と私を持ち上げると、客間を出た。
少し長い廊下を歩いて、その先の暖かい部屋を目指して。
「と、歳三さんお仕事は…っ」
「終わった」
「お茶煎れるね…!」
「まだいい」
囲炉裏のある居間に向かい、ストンと座った膝の上に乗せられる。
「あ、あの…」
「最高の息抜きだ」
「へっ…?」
大切なものを抱えるようにして体に回る腕、反射的に彼の肩に置いてしまった手。
「1人で帰って来たのか」
「う、うん」
「馬鹿、危ねえだろ」
目の前に綺麗な顔がある。
じっと見つめてくるから、また逸らしてしまった。