浅葱色の約束。─番外編─
「と、歳三さん…」
彼の首に腕を巻いた。
綺麗な髪に隠れている耳を見つけて、そっと唇を寄せる。
ドキドキとうるさい心臓の音は、彼に聞こえているはずだから。
もう隠すこともない。
「あのね…私を、お嫁さんにしてくれて、───…ありがとう」
ずっと言いたかった言葉がたくさんあった。
こうして暮らしても、中々言えない言葉がいっぱいあった。
ピタ、と動きの止まった土方さんへ私はゆっくり言葉を紡ぐ。
「歳三さんのこと、ずっとずっと……あ、愛して…ます」
手紙だけじゃなくて実際に伝えたかった。
この場所に1人で暮らし始めたとき、何度も何度も後悔して。
どうして気持ちを伝えられなかったんだろうって。
愛情をあなた達から教えてもらったというのに、一番伝えたかった愛情は伝えられず仕舞いで。
「私を“土方 梓”にしてくれて、…ありがとう」
───ちゅっ。
紅がつかない程度の優しさで頬に唇を寄せた。
私にとっての精一杯、これ以上は今はまだ出来ない。
甘えるというのはやっぱりまだ難しくて、それでもこの人はそんな私でさえも全部包んでくれちゃうような人。