浅葱色の約束。─番外編─
「…お前はやっぱり近藤さんの娘だな」
「え…?」
震える声が響いた。
「俺が言いてえ言葉を全部奪いやがるんだ」
愛情深く見つめてくれる、愛しい人の目。
一緒にたくさんのことを乗り越えてきた腕、いつも目を惹かれた黒く透き通るような髪。
ふわっと鼻をかすめる大好きな安心する匂い。
今、この手の中にその全てがある。
「そっくりそのまま返してやる」
掴めたのだ───水平線の先を。
ずっとずっと手を伸ばしていた存在が、ここにある。
「…お前はすげえ女だよ」
「わ、私…ちゃんと女の子に見えてる…?」
「そうとしか見えねえな。…最初から」
心がふわっと温かくなった。
一番最初に見破ってしまった人、気付いてしまった人。
それは“見破った”、“バレた”なんかじゃない。
最初からそう見てくれていたのだ。
この人は私を“女の子”としてずっと見てくれていた。
「んじゃ、そろそろ脱がしていいですか。
───お嬢さん」
“お嬢さん”なんて言ってくれるのだって、この人だけ。
男の私と女の私、両方を知っているのもこの人だけ。
小さくコクコク頷けば、ぎゅっと抱き締めてくれる。
髪を優しく撫でられて、そんな彼を胸いっぱいに感じた。