浅葱色の約束。─番外編─
「ねぇとうちゃん」
「どうした?」
「かあちゃんってさ、きれいだね」
とても強く、優しく、あたたかくて。
───…美しい人。
「おれ、嫁をもらうなら…かあちゃんみたいな人がいい」
お茶を啜った男が一瞬噎せたように見えたが、気のせいだろう。
「ませガキ…」
そう呟いて、少年の頭をクシャッと撫でた。
「お前はどっちかっつうと俺に似てる気がするが、───母ちゃんみたいな人になれ。」
幼い少年は、男の記憶にいつも残る少女によく似た笑顔で笑った。
「…これでよしっと。もう転んじゃ駄目だよ?」
「うん」
お礼の代わりにぎゅっと抱きつけば、それ以上のもので返してくれる。
スゥッと母親の愛情を目一杯に吸い込んだ。
「かあちゃん、今日のご飯はなぁに?」
「ふふっ。あなたの好きなもの」
「おれいっぱい食べる!」
「じゃあまずはお父さんとお風呂に入って来ようね」
「うんっ!」
そんな、ごくありふれた幸せ───。