浅葱色の約束。─番外編─
知られたくない気持ち
ガサガサガサッ───!!
カァカァカァカァ───…。
「わっ」
郵便受けから落ちた封の音と、烏の鳴き声はほぼ同時。
それなのに烏の鳴き声の方があとに聞こえて、それはまるでこの状況を笑われてしまったみたいだ。
「……多すぎるよ…」
来る日も来る日も全て“拝啓 土方歳三 様”と、表面には達筆な文字で書かれていて。
それはどれも町の女達からのものだと理解してしまうのは、こういうことは今日が初めてでは無いからだった。
「土方さん、今日もたくさん来てたよ」
すごいよ土方さん、なにかプレゼント付きのものもあるよ。
手縫いなのかな…。
細長い巾着袋のようなそれは、煙管が入るものだと商店街でも売られていた為に私も知っていた。
「…宛名だけ変えて近所の家に入れとけ」
「そんなのしたら怒られちゃうよ」
こうして恋文を一生懸命書いた人達に。
ため息を吐きつつも慣れたものなのか、彼もそこまで驚いてはいない。
新撰組に居た頃から、副長の頃からこんなのは日常茶飯事だった。
それを知っていたからこそ、当たり前のように普通に手渡せる。