浅葱色の約束。─番外編─




「なにやってんだ、てめえはコソコソと」


「……な、なんでも…、ないよ…」



男が声をかければビクンと肩を揺らし、歳の若い女はおずおず姿を現した。

そして男とその先にいる綺麗な女を見つめる。



「お前が堂々と来りゃ、こんなことになってなかったんだぞ」


「ごめんなさい…」



きっと声をかけるタイミングが同じだったのだろう。

空気を読んでしまう妻は、何故か見知らぬ女に夫を譲ってしまった。


声をかけるわけにもいかず、立ち去るわけにもいかず。

こうして様子を見ていた、そんなとこだろう。



「用は済んだのか」


「うん…、ごめんね待たせちゃって…」



この町で知り合ったという同い年程の女と久しぶりの再会をし、女同士他愛ない会話を始めた梓に土方は少し場所を離れて待機していた。


俺が隣を歩いてりゃいつもソワソワ落ち着かない様子なのだ、この女は。

だからこそあえて土方も、そのときは妻の数少ない交流に自分から席を外した。


どうせくだらねえことで悩んでるだけだと思うが。



「土方さんの用は…」


「歳三」


「…と、歳三さんの用は…」



チラッと梓は女を見つめる。

ニコッと微笑まれ、どうしていいか分からずペコッと頭を下げた。


ったく…、律儀に下げんなっつうの。



「妹さんかしら」



全くこの歳の女っつうのは本当に嫌味ったらしくてありゃしねえ。



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