浅葱色の約束。─番外編─




土方さんが新たな名前を呼べば、斎藤さんは「梓も居るんですか?」と食いぎみに問いかけた。

だけど幾ら待っても一向に彼が知る“梓”は現れない。



「おい梓、返事はしろと昔から教えてただろうが」


「……は、はい…」



沈黙。

おずおずと返事をした私を見開く目が捉えて、バチッと合った。


それから数秒して。



「……あんたは……梓の、姉ではないのか……?」


「と、時折 梓です……よろしくお願いします」



まるで初めて彼等に挨拶をしたときのよう、土方さんに腕を引かれてペコリとお辞儀。

斎藤さんにしては珍しいくらいの表情に、土方さんは笑った。



「待ってください副長。確かに梓は身体が弱く女子のような顔立ちをしていましたが……さすがに副長ともあろうお方がそういう趣味だったとは…」


「違ぇよ。なんでそうなる」


「ですが……梓は男でしょう」


「こいつは女だ」



再び斎藤さんの目は大きく開かれた。


ずっと騙していたこと。
嘘を吐き続けていたこと。

どう反応されるか怖くて思わず震えそうになった私の背中を支えてくれる大好きな手。



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