浅葱色の約束。─番外編─
「男だと偽って新撰組に置いたのは俺だ。だから斎藤、責めるなら俺を責めろ。こいつは何も悪くない」
頭を下げた土方さん。
斎藤さんに「副長」と呼ばれる価値を無くしてまでも私を守ろうとしてくれているのだ。
「切腹だな、俺は確実に。こうして俺だけが幸せになってんのも許されねえって分かってる」
「ち、違うよ土方さん…!あのね斎藤さんっ、騙してたのは私だよ…!
だから土方さんを責めないでください、お願いします…っ」
斎藤さんの前、身を乗り出すようにして床に両手をついて頭を下げた。
土下座をして許してもらえるとも思っていない。
「…頭を上げてくれ、梓」
淡々と言い放つ斎藤さんは、やはりどこか冷淡さを感じるもの。
彼は観察の役目も受け持っていて、伊東 甲子太郎から近藤 勇を守ったのだって、斎藤一の密偵の成果があったからだった。
「副長、俺はいま新撰組ではありません。妻を持つ1人の夫であり、もうすぐ子供が生まれるただの父親です」
「…斎藤、」
「それに梓は俺にとっても可愛い弟分でした。今は妹かもしれませんが…逆に女として本来の姿で生きれているなら、それだけで十分です」