浅葱色の約束。─番外編─




頭どころか全部冷やせと言うように。



「げほっ、ごほっ、」



まるで何が起きたか分かっていないそいつは浴槽の中、水浸しになりながら咳き込んだ。

そして目をパチパチ瞬きさせて顔を歪ませる。



「どうして…、そんなに意地悪ばっかりするの…っ」


「今に始まったことじゃねえだろ」


「今日誕生日だよ私…」


「…おめでとう」


「こんな状況で言う…?」



キッと、俺を睨んでくる。

こいつに今一番必要なことは多分これだ。


とりあえず八つ当たりでも何でもいいが責めさせて、無理矢理にでも気持ちを言わせること。



「ひどいよ土方さん…っ」


「…そりゃ俺の台詞なんだよ」



わかって無さすぎるのだ。


俺が後悔?
するわけねえだろ。

てめえは今まで俺の何を見てやがったんだ。

わかりきったようなこと言いやがって。



「てめえは俺の嫁だろうが」



その胸ぐらを掴んで引き寄せ、揺れる瞳の奥を見つめた。

こうして見ると、もうガキじゃないんだと思い知らされる。



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