浅葱色の約束。─番外編─




水に滴る睫毛、潤む瞳。
ポタポタと水滴の落ちる髪、濡れた唇。

着物が肌にくっ付き、その緩やかな曲線を表している。



「思ってることあんなら言えっつっただろうが。飲み込んでんじゃねえよ」


「っ、」


「傷付きたくねえからって勝手に自己解決させて離れようとしてんのはてめえじゃねえのか」



こちとら7年お前の成長を見てんだよ。

あんな何も出来ないガキだったお前も、涙を下手に隠すお前も。

傷だらけでも馬鹿にされても、俺達を守る為なら言葉も気持ちも飲み込んじまうようなお前を。


俺はずっと、見てたんだよ。



「お前のことは近藤さんより分かってるつもりなんだよ俺は」



そして俺は今、そんな女を前に教えなければいけない感情がある。



「てめえが苦しい理由教えてやろうか」



コクコクと頷く梓。

こんなときに限ってまで素直、聞き分けは昔から良い。




「俺のことが好きで好きで、
───…どうしようもねえからだよ」




独占欲───。

俺はそいつに新しい感情の名前を教えた。


スッと見開かれる目。

どうやらこいつには、まだまだ躾が必要らしい。



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