浅葱色の約束。─番外編─
『今はええ。お前が婆さんになるまでここで待っててやるから』
早く来たら許さへんで!
相変わらず彼は私の両頬を掴んで笑う。
みんな、みんなあの頃のまま。
『梓、また大きくなったなぁ』
───お父さん。
お父さん、お父さん。
私、もっとたくさん近藤さんのことを“お父さん”って呼びたかった。
前にね、怖い夢を見たんだよ。
私のせいでみんなが暗闇に落とされちゃうの。
『俺は父親として当たり前のことをしたまでさ。近藤 勇の娘はそれほど弱くないって知っていたからな』
そう、あなたは近藤 勇なんだよ。
大久保 大和じゃない。
強くて広くて優しくて、何よりも大きい人。
『トシと仲良くやってるようで安心したよ』
ううん。
私ね、迷惑かけてばかりなの。
全然うまくなんかやれてない。
いつもため息を吐かせてしまって、きっと土方さんは参ってる。
『そんなことは無いさ。トシには梓しか居ないんだ』
彼はそう言って、私の頭を撫でた。
『トシを守ってやれるのだって梓だけなんだぞ?』
私、いつも守られてばかりなの。
今までだってずっとそう。
幸せをくれるのはいつだって新撰組で、あなた達で…土方さんだった。
私───…ちゃんと誰かを愛せれてる…?