浅葱色の約束。─番外編─




『ほんとに君って、自分のことになると自信なくなって疎いんだから』



沖田さんはそう言うと、あの日のように私を抱き締めた。



“ずっと……こうしたかった…”



最期に言ったときより、しっかりと抱き締めてくれる彼の腕は。

兄のようで、母のようで。



『前に言ったでしょ、梓は土方さんの栄養材だって』



あの人、君が居ないと立てもしないんだから───。


沖田さん。

私、まだ沖田さんより土方さんのこと全然知らなくてどうしたらいいか分からないの。


どうして怒っているのか、どうしてそんな言葉を言うのか。

全然、わからない。



『全く。僕は君の笑ってる顔が見たかったんだけどなぁ』



───ちゅっ。


すると彼は、私のおでこに唇をつけた。

悪戯に成功した子供のように笑って。


そして、その唇を私の耳に寄せる。



『ーーー……』



また、助けられちゃった。

沖田さんはいつも最後の最後で私を助けてくれるね。


ふふっと笑えば、彼は満足気に私の頭を撫でた。



『トシを頼んだぞ梓。君は俺の自慢の娘なんだ。もっと自分を誇りに思いなさい』


『土方さんに伝言よろしくね』


『もう戻って来るんちゃうぞ!』



ありがとう。

お父さん、沖田さん、朔太郎。


もう少し、もう少しだけ、行ってくるね───…。



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