浅葱色の約束。─番外編─
「うるさい女だなぁ」
バチンッ───!
「っ…」
男は私の頬を思いっきり叩く。
「僕は君を愛しているからこうして叩いてあげてるんだよ」
こんなの……愛じゃない。
お母さんだって言ってた。
“暴力をする男だけは駄目”って。
お母さんの言った通りだね。
でもねお母さん、私が選んだ人はとても強くて優しい人なんだよ。
私ね、初めて誰かに“愛してる”って伝えたの。
愛なんか知らなかったのに、気付いたらお手紙に書いてたんだよ。
そしたらね、その人は同じ言葉を私に言ってくれた。
「土方…さん…、」
「まだ言うか…!!他の男の名前を出すなんて躾のなってない女だ…!!」
その人と今は幸せに暮らしているよ。
毎日すっごく楽しいの。
口は悪いけど、人を湯槽に落とすような人だけど、それでも私が欲しいものをくれる。
とても、すごい人なんだよ。
「歳三…さん……助けて…っ、歳三さんっ…!」
私ね、その人のお嫁さんなんだよ。
お母さん、きっとどこかで見てくれているでしょう?
だからその人の格好良さは十分に伝わってるよね。
「歳三さん……っ」
「呼んだって来ねぇっつってんだろこのアマ!!さっさと───ぐはっぁ…!!!!」
私ね。
その人になら全部、全部あげられるよ。
「誰の女に手ぇ出してんだてめえは」
私の命はこの人のもの。
この人の命も───…私のものだから。