呑みますか、呑みませんか。
「お待たせ」
待ち合わせしたのは、会社から離れた、夜もあいているカフェ。
基本的にデスクワークを淡々とこなす経理事務のわたしは定時退社。
一方、タマキさんはバリバリの営業マンなので残業も少なくないし出張だってある。
外回り本当にお疲れ様です。
「オギノさん。なにか食べた?」
「いえ」
「腹へったろ」
「……タマキさんは?」
「ぺこぺこ」
すました顔してぺこぺこって言うの。……かわいい。
「なに食べましょうか」
「酒のあてって言ったら。オギノさん、どんなの思い浮かべる?」
――――同僚と、酒を嗜む。
それは世間一般ではごく普通のことかもしれないけれど、わたし達は、ちょっとちがう。
「そうですねえ。わたしは、スルメと。枝豆と。たこわさと……あ、焼き魚とか」
なにがちがうか?
それは――……
「なかなか渋いね」
「えっ、おかしなこと言いました?」
「いや、おかしくはないと思うよ。ただ。大学時代のツレは。ポテトとかピザをあてに飲んでたんだよな。あとは焼き鳥」
「なるほど……。わたしはポテトやピザならコーラかカルピス飲みたいかもです」
「わかる」
「わかってくれます?」
「ビール、とは。ならないねえ」
カッコよくて仕事のできるタマキさんの弱点は、アルコールなのです。