呑みますか、呑みませんか。


 わたしは飲めないなら無理に飲まなくてもいいと思うんだけど、本人はコンプレックスのようで、外ではそれを隠して乗りきるか、お酒を飲む場は避られるなら避けるのだそう。


 よって、


「実家から海の幸が届いたんだ」

「いいですね……!」

「もちろん来るだろ」

「はい、タマキさんが……よければ」


 わたし達の場合、宅飲み限定となる。


 言わずもがな、自宅で飲めば周りを気にせずに酔えるからだ。


 さほど親しくもないのに家にまで伺う。


 会社では話さないのに。

 ましてや男と女なのに。


 それが、普通の同僚とは、一味違うところなんじゃないかって思うんだけど。


 他にプライベートで付き合いのある異性の同僚もいないし、普通がわからなくもある。


(さすがに二人で宅飲みは。レアケースなのでは?)


 これまではお酒に積極的になれなかったタマキさんも、わたしの前でなら気を許してくれるのか――……


「これ見てオギノさん」

「梅酒……が。こんなにたくさん!」

「飲み比べセット」


 けっこう開放的になっておられる。

 いや、


「オギノさんと飲んでみようと思って」


 かなり開放的になっているね。うん。

 ウキウキしていてかわいいよ、すごく。


 会社ではキリッとしているのに。
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