忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~
お母さんが一人で迎えに来てくれるのかと思っていたけど、まだ小さい健がいるからか、お父さんと健と三人で迎えに来てくれた。

健が抱っこして欲しそうに私の方に手を伸ばすが「姉ちゃんはしんどいからな、我慢してな」
お母さんが優しく健に話しかけやめさせる。健は不満そうに口を尖らせた。その仕草が可愛らしくて思わず笑う。

「顔色は悪いけど、笑顔が見えてホッとしたわ~帰ってゆっくりしんちゃい。」

お父さんが優しく背中をさすってくれる。

家族の顔を見るとホッとする。守られて、大切にされている、そんな気持ちで満たされる。

車で学校を後にした。車で揺られている間ウトウトと眠る事ができた。

家につき、重いからだを何とか引きずるようにして歩いて二階の自分の部屋まで上がり、パジャマに着替えて布団に潜り込んだ。

考えるのはやはり、昨日の唯の言葉と東山君の事、永井君への自分の気持ち。それと…永井君がどうして運んでくれたのか…おでこに触れた手が震えていたこと…永井君の気持ちが知りたい…
永井君の腕を引っ張り保健室から出ていく唯の姿も浮かんでは消えて浮かんでは消えて…唯の気持ちは?やっぱり唯は永井君の事が…。

そんなことをぐるぐると考えていてなかなか熟睡できず、体調がどんどん悪くなってしまった。熱まで出て、結局そのまま三日間寝込んでしまった。

いろいろ考えても人の気持ちなんて本当のことはわかるわけが無かった。

自分の永井君への気持ちはどうしたらいいのだろう…心のすみに黙ってしまっておくべきなのか、それとも亜紀にだけは伝えた方がいいのだろうか…

永井君への思いが、一人では抱えきれないほど大きくふくらんでしまった。そう感じて相変わらず胸がチクチクと痛んだ。
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