忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
お昼休みに唯に誘われて三人で第三校舎の渡り廊下に来た。第三校舎はパソコン教室や美術室などの専門棟なのでお昼休みには人けが無い。
広い渡り廊下の段差に座り、唯がポツポツと話し始める。
時に声を詰まらせながら、言いにくそうに…でも真剣に真実を伝えようと話す一言一言に息を飲みながら聞き入った。
思いもよらない内容で、俺も達也もショックが隠しきれなかった。
後藤さんの気持ちを考えると胸が潰れそうな気がした。そして、同じくらい唯も辛かっただろうと思った。
「ありがとう。話してくれて。」
震える唯の肩に手をやる。
ガシッ!
達也が渡り廊下の柵を足で蹴った。両手を握りしめて怒りで震えている。
「そいつ、マジでゆるせん。」
絞り出すように達也が言う。
「じゃけん、みぃにはもう二度と傷ついて欲しくないんよ。あれ以来中学校生活、みぃは恋もできずに、いつもうちらの影にかくれてひっそりと過ごしてきたん。あんなに可愛くて優しくて良い子はおらんのに。」
「そっか…。」
それしか言えず、自分で自分が歯がゆい。
「みぃ、あれ以来男の子とうまくしゃべれんようになって…じゃけど達也は違う気がしたんよ。」
唯のその言葉に達也は目を丸くする。
俺は…心の中がチクリと痛んだ。
「達也が話しかける時は前みたいな屈託の無い笑顔になるような気がするん。安心しとるような…」
唯がそこまで言うと達也はさっきまでの怒りが薄れ、顔を赤くしてニヤケはじめた。
俺は何も言えず、黙って話を聞いた。
「じゃけん、みぃには達也みたいな奴がお似合いじゃと思うんよ。」
また喜んで有頂天になるのだろうと達也の顔を見た。しかし、達也は口をきっと結び、真剣な表情をしている。
「…だったら、なおさら慎重に、ゆっくり仲良くなっていきたい。大切にしたいんじゃ。未来ちゃんのことを。辛い思いもさせとぉないし、泣かせとぉ無いし。笑顔でおって欲しいんじゃ。好きなんじゃ…本気で。」
決心したように言う。
「達也…。」
達也の真剣さが伝わり、負けたような気がした。
唯が言うように後藤さんには達也のような真っ直ぐで明るくて優しい奴が似合う、そう思った。
「みぃが傷つくような噂話の的になって欲しくなくて、この前つい光にきつくあたってしもぉたんよ。ごめんな。倒れたとき、あんな風に違うクラスの男の子が突然入ってきて抱き抱えて運ぶなんか、噂好きな子らぁの格好の的じゃし、何言われるかわからんじゃろ…悪目立ちじゃと思って…」
バツが悪そうにうつむきながら言う。
「あぁ、そう言うことじゃったんじゃな。わかった。じゃけど、あれはホンマに偶然で…」
言い訳のように呟く。
目の裏に焼き付いた後藤さんの控えめな笑顔とこの気持ちを消してしまわなければ…
しばらく三人で黙ったまま過ごした。
キンコンカンコン~
予鈴が聞こえたところで唯が「さっ、教室帰ろうか。二人とも、頼むで!」と言い先に歩きだした。
「遅れるで~!」
いつまでも動こうとしない俺たちに向かっていつもの明るい笑顔で声をかける唯の姿に複雑な思いがした。
切り替えようと思ってもなかなか気持ちを切り替える事は出来そうに無い。そのくらいひどく戸惑っていた。
おそらく、達也も…。
広い渡り廊下の段差に座り、唯がポツポツと話し始める。
時に声を詰まらせながら、言いにくそうに…でも真剣に真実を伝えようと話す一言一言に息を飲みながら聞き入った。
思いもよらない内容で、俺も達也もショックが隠しきれなかった。
後藤さんの気持ちを考えると胸が潰れそうな気がした。そして、同じくらい唯も辛かっただろうと思った。
「ありがとう。話してくれて。」
震える唯の肩に手をやる。
ガシッ!
達也が渡り廊下の柵を足で蹴った。両手を握りしめて怒りで震えている。
「そいつ、マジでゆるせん。」
絞り出すように達也が言う。
「じゃけん、みぃにはもう二度と傷ついて欲しくないんよ。あれ以来中学校生活、みぃは恋もできずに、いつもうちらの影にかくれてひっそりと過ごしてきたん。あんなに可愛くて優しくて良い子はおらんのに。」
「そっか…。」
それしか言えず、自分で自分が歯がゆい。
「みぃ、あれ以来男の子とうまくしゃべれんようになって…じゃけど達也は違う気がしたんよ。」
唯のその言葉に達也は目を丸くする。
俺は…心の中がチクリと痛んだ。
「達也が話しかける時は前みたいな屈託の無い笑顔になるような気がするん。安心しとるような…」
唯がそこまで言うと達也はさっきまでの怒りが薄れ、顔を赤くしてニヤケはじめた。
俺は何も言えず、黙って話を聞いた。
「じゃけん、みぃには達也みたいな奴がお似合いじゃと思うんよ。」
また喜んで有頂天になるのだろうと達也の顔を見た。しかし、達也は口をきっと結び、真剣な表情をしている。
「…だったら、なおさら慎重に、ゆっくり仲良くなっていきたい。大切にしたいんじゃ。未来ちゃんのことを。辛い思いもさせとぉないし、泣かせとぉ無いし。笑顔でおって欲しいんじゃ。好きなんじゃ…本気で。」
決心したように言う。
「達也…。」
達也の真剣さが伝わり、負けたような気がした。
唯が言うように後藤さんには達也のような真っ直ぐで明るくて優しい奴が似合う、そう思った。
「みぃが傷つくような噂話の的になって欲しくなくて、この前つい光にきつくあたってしもぉたんよ。ごめんな。倒れたとき、あんな風に違うクラスの男の子が突然入ってきて抱き抱えて運ぶなんか、噂好きな子らぁの格好の的じゃし、何言われるかわからんじゃろ…悪目立ちじゃと思って…」
バツが悪そうにうつむきながら言う。
「あぁ、そう言うことじゃったんじゃな。わかった。じゃけど、あれはホンマに偶然で…」
言い訳のように呟く。
目の裏に焼き付いた後藤さんの控えめな笑顔とこの気持ちを消してしまわなければ…
しばらく三人で黙ったまま過ごした。
キンコンカンコン~
予鈴が聞こえたところで唯が「さっ、教室帰ろうか。二人とも、頼むで!」と言い先に歩きだした。
「遅れるで~!」
いつまでも動こうとしない俺たちに向かっていつもの明るい笑顔で声をかける唯の姿に複雑な思いがした。
切り替えようと思ってもなかなか気持ちを切り替える事は出来そうに無い。そのくらいひどく戸惑っていた。
おそらく、達也も…。