忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
部活が終わり、自主練習をするまでの間 部室でおにぎりを食べていると、少し離れたところからひょっこりと部室の方をのぞき中をうかがうような人影が見えた。外は暗くて良く見えないから誰なのか部室から出て確かめようとして、ハッとした。
後藤さんだった。
こんなに近くでバッチリ顔を合わせてしまったのに目をそらすわけにもいかず
「後藤さん!どぉしたん?」
笑顔で声をかけた。(笑顔は不自然じゃなかったかな?)心配になる。
「あっ、あの…今日部活でチョコレートクッキー作ったんじゃけど、たっ、達也くんにあげる約束して…」
後藤さんは笑顔だったが少し緊張しているように見えた。
(達也に…か)当たり前なのにがっかりしてしまう。
「あ、達也だったら今監督に呼ばれとっておらんけぇ、俺から渡しとこうか?」
「あっ、じゃ、じゃあお願いしようかな」
うつむきかげんに紙袋を渡す後藤さん。
後藤さんと言葉を交わすのはすごく久しぶりだ。2ヶ月以上ぶりかな…そんなことを思いながら紙袋を受けとる。
「…え?」
紙袋は2つあった。
「もし、もし良かったら永井君もどうかな?と思って。一つは永井君のなん。」
見上げるようにして俺の目を見て後藤さんが言う。
「えっ、俺ももらってもええん?!」
思わず声が大きくなる。
「いゃ、そんな、美味しいかどうかわからんけど。」そう言って微笑む後藤さんの表情を見てホッとする
「美味しいと思うで、絶対に!美味しくないわけが無い!!」
紙袋を通してチョコレートクッキーのいい香りがする。(俺にも?!)嬉しくて紙袋を抱きしめた。
「ありがとう!」
暗いし身長差もあり、良く見えないから少しかがんで後藤さんの顔を覗き込み、お礼を言った。
ドキッとした。
後藤さんの目が少し潤んでいるように見えたから。
「どうしたん?」
不安になり、思わず後藤さんの肩に手をやる。
「ううん。」後藤さんは顔を横に振った。そしてゆっくりと、小さく震える声で「うち、永井君に避けられとるんじゃ無いかって誤解しとって…」そうポツリポツリと話した。
ドキッとした。
やっぱり嫌な気持ちにさせていたのか、と胸が痛んだ。
「そっ、そんなわけないが。」やっと絞り出した言葉は気のきかない一言。自分に呆れる。
「良かった…うちの考えすぎだったみたいで。ごめんなさい。ウザかったねそんな風に思ってしもぉて」
目じりをそっとぬぐいながらに言う後藤さんを見てまた胸が痛んだ。
俺のせいだ…
後悔する気持ちでいっぱいになる。
「ホンマごめん」
そう言った時にはもう体が勝手に動いていて後藤さんの頭を撫でていた。
驚いて俺を見上げる後藤さんの目を覗き込みながら「ウザいやこ…」
そう言いかけたその時
「未来ちゃん!」
達也の声がした。あわてて後藤さんの頭に置いていた手を引っ込める。
後藤さんは駆け寄ってくる達也の方に体を向け「達也くん、クッキー持ってきたよ。」と言う。
さっきの不安そうに震える小さな声ではない。
その表情は見なくても明るい笑顔であることは容易にわかる。
「ありがとう!ホンマに持ってきてくれたん!」
「フフフッ。だって、大好物なんじゃろ。フフフッ」
「え~どこどこ?」
達也は後藤さんの周りをくるくる回りながらおどけて言う。
そんな達也を見てクスクス声をあげて笑う後藤さんの笑顔はとても明るく眩しくて見ていられなかった。
「これじゃ~これ!」
達也の胸元に紙袋を押し付ける。
ガサッと音をたてて奪い取った達也は目をキラキラさせながら早速紙袋に手を突っ込んでクッキーをつかみ口に放り込む。
「ん~まい!マジでうますぎる!未来ちゃん、さすがじゃな」
大絶賛する達也を見て微笑む後藤さん。
俺は…そっと紙袋を背中に隠した。
「光!俺、未来ちゃんバス停まで送ってくるけん。言うとくけどサボりじゃないで!練習はもう終わって、自主練習までの間の休憩時間じゃし」
「おっ、おお。わかった。」
「じゃあ、行こうか未来ちゃん」
達也がそっと後藤さんの背中を押す。
「うん。ありがとう。じゃあ、また明日ね永井君。」後藤さんが安心しきったような顔でそう言って小さく手を振った。
「おん、また明日。」
手を振り返す。
何か楽しそうに話しながらゆっくり歩いて遠ざかっていく二人の姿を見送りながら(達也は後藤さんを笑顔にする力を持っとる。…あいつは、後藤さんの傍におる資格がある)そう思っていた。
そんなことを思いながら見送り続けていた時、後藤さんがふとこちらを振り返ったから一瞬心臓がひっくり返ったような気がした。
もらった紙袋を高くあげて見せ、もう一度手を振る。
後藤さんがどんな顔をしているかは暗くて見えなかった。
「ウザいやこ、思うわけが無いが…」
小さくなる後ろ姿に向けて呟いた。
後藤さんだった。
こんなに近くでバッチリ顔を合わせてしまったのに目をそらすわけにもいかず
「後藤さん!どぉしたん?」
笑顔で声をかけた。(笑顔は不自然じゃなかったかな?)心配になる。
「あっ、あの…今日部活でチョコレートクッキー作ったんじゃけど、たっ、達也くんにあげる約束して…」
後藤さんは笑顔だったが少し緊張しているように見えた。
(達也に…か)当たり前なのにがっかりしてしまう。
「あ、達也だったら今監督に呼ばれとっておらんけぇ、俺から渡しとこうか?」
「あっ、じゃ、じゃあお願いしようかな」
うつむきかげんに紙袋を渡す後藤さん。
後藤さんと言葉を交わすのはすごく久しぶりだ。2ヶ月以上ぶりかな…そんなことを思いながら紙袋を受けとる。
「…え?」
紙袋は2つあった。
「もし、もし良かったら永井君もどうかな?と思って。一つは永井君のなん。」
見上げるようにして俺の目を見て後藤さんが言う。
「えっ、俺ももらってもええん?!」
思わず声が大きくなる。
「いゃ、そんな、美味しいかどうかわからんけど。」そう言って微笑む後藤さんの表情を見てホッとする
「美味しいと思うで、絶対に!美味しくないわけが無い!!」
紙袋を通してチョコレートクッキーのいい香りがする。(俺にも?!)嬉しくて紙袋を抱きしめた。
「ありがとう!」
暗いし身長差もあり、良く見えないから少しかがんで後藤さんの顔を覗き込み、お礼を言った。
ドキッとした。
後藤さんの目が少し潤んでいるように見えたから。
「どうしたん?」
不安になり、思わず後藤さんの肩に手をやる。
「ううん。」後藤さんは顔を横に振った。そしてゆっくりと、小さく震える声で「うち、永井君に避けられとるんじゃ無いかって誤解しとって…」そうポツリポツリと話した。
ドキッとした。
やっぱり嫌な気持ちにさせていたのか、と胸が痛んだ。
「そっ、そんなわけないが。」やっと絞り出した言葉は気のきかない一言。自分に呆れる。
「良かった…うちの考えすぎだったみたいで。ごめんなさい。ウザかったねそんな風に思ってしもぉて」
目じりをそっとぬぐいながらに言う後藤さんを見てまた胸が痛んだ。
俺のせいだ…
後悔する気持ちでいっぱいになる。
「ホンマごめん」
そう言った時にはもう体が勝手に動いていて後藤さんの頭を撫でていた。
驚いて俺を見上げる後藤さんの目を覗き込みながら「ウザいやこ…」
そう言いかけたその時
「未来ちゃん!」
達也の声がした。あわてて後藤さんの頭に置いていた手を引っ込める。
後藤さんは駆け寄ってくる達也の方に体を向け「達也くん、クッキー持ってきたよ。」と言う。
さっきの不安そうに震える小さな声ではない。
その表情は見なくても明るい笑顔であることは容易にわかる。
「ありがとう!ホンマに持ってきてくれたん!」
「フフフッ。だって、大好物なんじゃろ。フフフッ」
「え~どこどこ?」
達也は後藤さんの周りをくるくる回りながらおどけて言う。
そんな達也を見てクスクス声をあげて笑う後藤さんの笑顔はとても明るく眩しくて見ていられなかった。
「これじゃ~これ!」
達也の胸元に紙袋を押し付ける。
ガサッと音をたてて奪い取った達也は目をキラキラさせながら早速紙袋に手を突っ込んでクッキーをつかみ口に放り込む。
「ん~まい!マジでうますぎる!未来ちゃん、さすがじゃな」
大絶賛する達也を見て微笑む後藤さん。
俺は…そっと紙袋を背中に隠した。
「光!俺、未来ちゃんバス停まで送ってくるけん。言うとくけどサボりじゃないで!練習はもう終わって、自主練習までの間の休憩時間じゃし」
「おっ、おお。わかった。」
「じゃあ、行こうか未来ちゃん」
達也がそっと後藤さんの背中を押す。
「うん。ありがとう。じゃあ、また明日ね永井君。」後藤さんが安心しきったような顔でそう言って小さく手を振った。
「おん、また明日。」
手を振り返す。
何か楽しそうに話しながらゆっくり歩いて遠ざかっていく二人の姿を見送りながら(達也は後藤さんを笑顔にする力を持っとる。…あいつは、後藤さんの傍におる資格がある)そう思っていた。
そんなことを思いながら見送り続けていた時、後藤さんがふとこちらを振り返ったから一瞬心臓がひっくり返ったような気がした。
もらった紙袋を高くあげて見せ、もう一度手を振る。
後藤さんがどんな顔をしているかは暗くて見えなかった。
「ウザいやこ、思うわけが無いが…」
小さくなる後ろ姿に向けて呟いた。