忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~

# 未来side

# 未来side

「未来ちゃん、何かあった?」

バス停まで肩を並べて歩いている途中で達也くんが少し声を落としてたずねて来た。

(すっ、するどいなぁ…達也くん)
「えっ?どうして?」

「ん?何か、未来ちゃん、泣いたんかなぁ…て顔しとるけん。」
モゴモゴと口ごもりながら言う。

「うん…実はうち、少し前から永井君に避けられとるんじゃないかって思っとって、さっき普通に話が出来て、避けられとるわけじゃないってわかって安心したけんちょっと…ちょっと涙ぐんでしもぉて。バカじゃろ?フフッ。」

自虐的に笑って言ったけど、達也くんはいたって真剣に話を聞いてくれた。

「未来ちゃん?未来ちゃんはもう少し自分に自信を持ってええと思うで。」

立ち止まり、真剣な顔と声でそう言ってくれた達也くんの顔を見る。

フッと微笑み、「俺らいっつも言ようるじゃろ~未来ちゃん可愛いって!」と言ったかと思ったら…

パシッ 達也くんが軽く背中を叩いた。

「ひゃっ!」
びっくりして背筋がのびた。

「下向かずに顔をあげて!驚いた顔も可愛いで~」
からかうように言うから思わず笑ってしまう。

私もパシッと叩き返す。
「もぉ~!フフフッ」

「痛~!以外と力あるけんなぁ~未来ちゃんは。油断できんわ!ハハハッ」

「油断できんって!?もぉ!フフフッ」

バス停まで着くと間もなくバスが近付くのが見えた。
「達也くん、ありがとね。」
達也くんの顔を見てお礼を言う。

「いや、いや、俺が送りたかっただけじゃけぇ。」頭をかきながら答える。

「そう言えば、監督に呼ばれとった…って何かあった?」
ふと気になりたずねた。

「ん?いゃ、練習メニューについてな、相談。」
口ごもりながら言う。

「ホント?またサボって叱られたかと思った。」
少し意地悪に言ってみた。

「プッ クククッ。いや、俺どんな評価なん?未来ちゃんクククッ。」
お腹を抱えて笑いながらそう言った時バスが目の前で止まった。

「じゃあ、また明日!」
「おぅ、また明日じゃな!」

そう言って別れ、バスの中から外を見ると笑顔で両手をブンブンと振る達也くんが少しずつ遠ざかって行った。

いつも笑顔と元気をくれる人…。

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