忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
放課後、カフェの二人かけの席で亜紀と向かい合って座った。
カフェオレが少しぬるくなってしまったがまだ話し出せずにいた。
そんな私を急かすこと無くコーラをストローでチビチビ飲みながら何気ない話題を振ってくれる亜紀の優しさが身に染みた。
でも、いつまでも黙っていられない。部活までサボらせたのだから…と意を決して話し始めた。
「あんな…前にな…野球部の応援行ったことがあるが…。」
ポツリポツリと話し始めると、亜紀は優しい表情で少し前のめりになりながら聞いてくれた。
唯が達也くんと私がお似合いだと思うと言ったこと、達也くんから何か言われたわけではないけど手を握られたことがあること、何かと話しかけてくれること…それらをつたないけど一生懸命話した。その間、ウンウンとうなずきながら真剣に聞いてくれていた。
少し考え込んだあと思いきったように亜紀が口を開いた。
「…それで、みぃの気持ちは?東山のことどう思う?」
あらためて正面から聞かれると、自分の気持ちに自信が無くなる。
唯から達也くんの思いをほのめかされ、達也くんの涙を見てしまってから達也くんのことが気になるのは確かだ。うぬぼれなのかもしれないのだけれど…。話していると心がポカポカとして明るい気持ちと笑顔になれる。自分にとって大切な人であることには違いがない。
「…うーん。大切…大切な友達…かな。」
「ふぅ…そうか。じゃあ、行けば?行けばえんじゃない?ホワイトデー。それとも他に気になることあるん?」
ちょっとため息をついて亜紀が言う。
「…あっと…いや、でも…」
口ごもる。
気になること…永井くん…永井くんも一緒なんだけど、いいのかな?唯は…?唯がどう思うか…。
「永井?」
亜紀が私の目をのぞきこんで聞いてくる。
もう隠せないと思った。
「…亜紀?。唯には黙っといて欲しいんじゃけど…。うち、入学式で永井くんのこと初めて見たとき、目が離せんかったん。ドキドキして、まだ永井くんがどんな人かなんかわからんのに。自分でもようわからんけど、何でか気になって。クラス違うし、見とるだけのことが多かったけど、唯のおかけででちょっと話できたり、目で追ううちに永井くんの優しさとか、人柄とかわかってきて…。でも、唯と永井くんの噂とか聞いてしもぉて、唯の態度とか見ても、唯と永井くんが一緒におるとこ見ても、噂は本当かもしれんと思うし。じゃけん、永井くんが一緒だったら、唯が…唯がどう思うか…。」
言いにくそうにしているのがわかったからか亜紀がそっと私の手を包み込むように握ってくれた。
「うん!大丈夫。少し前からみぃが何か悩んどるのはわかっとった。いつか話してくれるのをずっと、今か今かと待っとったんよ!倒れるほど悩んどるのに話せんほどのことなんじゃろうなぁ…って。グスッ。話してくれてありがとう。」
亜紀は涙目になり、鼻水をすすりながら喜んでくれた。
やっぱり…やっぱり泣くほど心配させてしまっていたんだと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ごめんね、亜紀。すぐに相談できんで…。」
「ううん、そんなこと…。で、みぃは永井のこと…?」
核心をつかれドキッとした。
「う~…わからんの。自分の事なのに。多分好き…なんかな…でもその好きが恋愛なんかあこがれなんか…。それに、唯は…唯も…。」
唯の気持ちがどうなのか、噂通りなのか…それは、今まで聞きたくても聞けずにいたことだった。
亜紀は包み込んでくれていた手を離し、一口コーラを飲んだ。
「うーん、うちも知らんのよ、ホントのことは。噂になっとるのは知っとる。もう付き合っとるんじゃないか、とか、もうすぐ付き合うんじゃないか、とか…」言いにくそうに言う。
「そっか…そうよな。でも、二人はお似合いじゃよな。」
冷めきったカフェオレを一口飲む。
少しの間考え込んでいた亜紀だが、思いきったように「でも、ホンマに二人が付き合っとるんならみぃとホワイトデー過ごそうやこ思わんのんじゃない?」と私の目を見ながらハッキリとした言い方で言った。
ハッとした。そうか…と思った。でも…
「でも、唯の気持ちはどうなんじゃろぉ。永井くんがうちを保健室まで運んでくれた時、唯が永井くんの腕を引いて怒ったように出ていったのが気になっとって…あれじゃが、好きな人が他の子お姫様抱っこして運んだりしたの知ったら…嫌よな。」
一番気になっていたことがやっと口にできた。
亜紀はウンウンとうなずいていた。
「うちもそれ、ホンマは気になっとったんよ…。
みぃもそうなんじゃないかなぁって薄々気づいとった。」
「え?」
「何となくじゃけど、みぃの好きな人は東山か永井なんかなぁって…最近はやっぱり東山かな?って思ったりしとったけど、永井なんかなぁって思ったりもしとったけん。」
亜紀は苦笑いしながら小さい声で言った。
「え?何で?うち、顔に出とった?態度に出とった?」
あわててしまう。
「いや、何となくな」
「えっ…じゃあ、じゃあ唯もそんな風に思っとるじゃろうか?」心配になって早口でたずねた。
「いや、唯は今クラスも部活も違って、今までみたいに一緒におる時間少ないけん気づいて無いんじゃないかなぁ。うちは同じクラスじゃから、永井や東山とわかれたあとのみぃの表情とか見とるが。じゃけん、何となく…な。」
「…。そっか…。」
それしか言えなかった。
「やっぱ、行けばええと思うで、ホワイトデー。行って、三人で会って自分の気持ち確かめんちゃい。唯のことは一旦おいといて。」
力強く言うその言葉に背中を押された気がした。
「うん、そうしてみる!亜紀、ありがとね、それと…ごめんなさい。いっぱい心配かけとったと思うし、苦しい思いもさせとったと思う。」
そう言うと、亜紀はまた目をうるませ、鼻の頭を真っ赤にしてズズッと鼻をすすった。
「そんな…そんなこと無いよ、話してくれてホンマに嬉しい。唯のことは心配無いわぁ、うちら親友じゃもん、な!」
「うん!ありがとう。」
亜紀の言葉は魔法のように私の心を軽くしてくれた。
「けど…何着て行こう?!」
そうと決まったら次の心配が襲ってきた。
「プッ!ホンマじゃ!作戦会議じゃなハハハッ」
亜紀が豪快に笑って言う。
それからは心配事は心のすみに追いやり、楽しいことだけを話して過ごした。
不安が和らいだ。
亜紀に心から感謝した。ホントに…。
カフェオレが少しぬるくなってしまったがまだ話し出せずにいた。
そんな私を急かすこと無くコーラをストローでチビチビ飲みながら何気ない話題を振ってくれる亜紀の優しさが身に染みた。
でも、いつまでも黙っていられない。部活までサボらせたのだから…と意を決して話し始めた。
「あんな…前にな…野球部の応援行ったことがあるが…。」
ポツリポツリと話し始めると、亜紀は優しい表情で少し前のめりになりながら聞いてくれた。
唯が達也くんと私がお似合いだと思うと言ったこと、達也くんから何か言われたわけではないけど手を握られたことがあること、何かと話しかけてくれること…それらをつたないけど一生懸命話した。その間、ウンウンとうなずきながら真剣に聞いてくれていた。
少し考え込んだあと思いきったように亜紀が口を開いた。
「…それで、みぃの気持ちは?東山のことどう思う?」
あらためて正面から聞かれると、自分の気持ちに自信が無くなる。
唯から達也くんの思いをほのめかされ、達也くんの涙を見てしまってから達也くんのことが気になるのは確かだ。うぬぼれなのかもしれないのだけれど…。話していると心がポカポカとして明るい気持ちと笑顔になれる。自分にとって大切な人であることには違いがない。
「…うーん。大切…大切な友達…かな。」
「ふぅ…そうか。じゃあ、行けば?行けばえんじゃない?ホワイトデー。それとも他に気になることあるん?」
ちょっとため息をついて亜紀が言う。
「…あっと…いや、でも…」
口ごもる。
気になること…永井くん…永井くんも一緒なんだけど、いいのかな?唯は…?唯がどう思うか…。
「永井?」
亜紀が私の目をのぞきこんで聞いてくる。
もう隠せないと思った。
「…亜紀?。唯には黙っといて欲しいんじゃけど…。うち、入学式で永井くんのこと初めて見たとき、目が離せんかったん。ドキドキして、まだ永井くんがどんな人かなんかわからんのに。自分でもようわからんけど、何でか気になって。クラス違うし、見とるだけのことが多かったけど、唯のおかけででちょっと話できたり、目で追ううちに永井くんの優しさとか、人柄とかわかってきて…。でも、唯と永井くんの噂とか聞いてしもぉて、唯の態度とか見ても、唯と永井くんが一緒におるとこ見ても、噂は本当かもしれんと思うし。じゃけん、永井くんが一緒だったら、唯が…唯がどう思うか…。」
言いにくそうにしているのがわかったからか亜紀がそっと私の手を包み込むように握ってくれた。
「うん!大丈夫。少し前からみぃが何か悩んどるのはわかっとった。いつか話してくれるのをずっと、今か今かと待っとったんよ!倒れるほど悩んどるのに話せんほどのことなんじゃろうなぁ…って。グスッ。話してくれてありがとう。」
亜紀は涙目になり、鼻水をすすりながら喜んでくれた。
やっぱり…やっぱり泣くほど心配させてしまっていたんだと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ごめんね、亜紀。すぐに相談できんで…。」
「ううん、そんなこと…。で、みぃは永井のこと…?」
核心をつかれドキッとした。
「う~…わからんの。自分の事なのに。多分好き…なんかな…でもその好きが恋愛なんかあこがれなんか…。それに、唯は…唯も…。」
唯の気持ちがどうなのか、噂通りなのか…それは、今まで聞きたくても聞けずにいたことだった。
亜紀は包み込んでくれていた手を離し、一口コーラを飲んだ。
「うーん、うちも知らんのよ、ホントのことは。噂になっとるのは知っとる。もう付き合っとるんじゃないか、とか、もうすぐ付き合うんじゃないか、とか…」言いにくそうに言う。
「そっか…そうよな。でも、二人はお似合いじゃよな。」
冷めきったカフェオレを一口飲む。
少しの間考え込んでいた亜紀だが、思いきったように「でも、ホンマに二人が付き合っとるんならみぃとホワイトデー過ごそうやこ思わんのんじゃない?」と私の目を見ながらハッキリとした言い方で言った。
ハッとした。そうか…と思った。でも…
「でも、唯の気持ちはどうなんじゃろぉ。永井くんがうちを保健室まで運んでくれた時、唯が永井くんの腕を引いて怒ったように出ていったのが気になっとって…あれじゃが、好きな人が他の子お姫様抱っこして運んだりしたの知ったら…嫌よな。」
一番気になっていたことがやっと口にできた。
亜紀はウンウンとうなずいていた。
「うちもそれ、ホンマは気になっとったんよ…。
みぃもそうなんじゃないかなぁって薄々気づいとった。」
「え?」
「何となくじゃけど、みぃの好きな人は東山か永井なんかなぁって…最近はやっぱり東山かな?って思ったりしとったけど、永井なんかなぁって思ったりもしとったけん。」
亜紀は苦笑いしながら小さい声で言った。
「え?何で?うち、顔に出とった?態度に出とった?」
あわててしまう。
「いや、何となくな」
「えっ…じゃあ、じゃあ唯もそんな風に思っとるじゃろうか?」心配になって早口でたずねた。
「いや、唯は今クラスも部活も違って、今までみたいに一緒におる時間少ないけん気づいて無いんじゃないかなぁ。うちは同じクラスじゃから、永井や東山とわかれたあとのみぃの表情とか見とるが。じゃけん、何となく…な。」
「…。そっか…。」
それしか言えなかった。
「やっぱ、行けばええと思うで、ホワイトデー。行って、三人で会って自分の気持ち確かめんちゃい。唯のことは一旦おいといて。」
力強く言うその言葉に背中を押された気がした。
「うん、そうしてみる!亜紀、ありがとね、それと…ごめんなさい。いっぱい心配かけとったと思うし、苦しい思いもさせとったと思う。」
そう言うと、亜紀はまた目をうるませ、鼻の頭を真っ赤にしてズズッと鼻をすすった。
「そんな…そんなこと無いよ、話してくれてホンマに嬉しい。唯のことは心配無いわぁ、うちら親友じゃもん、な!」
「うん!ありがとう。」
亜紀の言葉は魔法のように私の心を軽くしてくれた。
「けど…何着て行こう?!」
そうと決まったら次の心配が襲ってきた。
「プッ!ホンマじゃ!作戦会議じゃなハハハッ」
亜紀が豪快に笑って言う。
それからは心配事は心のすみに追いやり、楽しいことだけを話して過ごした。
不安が和らいだ。
亜紀に心から感謝した。ホントに…。