忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
待ち合わせは私の家の近くの駅に10時。
緊張して朝早く目覚めたが、着ていく服が決まらないまま9時を迎えた。
「ふぅ…ホンマ何着て行こう」
スカート?パンツ?
ジャケット?コート?
あぁ!もぉ!!
と優柔不断な自分にイライラしながら、部屋を散らかしまくってやっと決めたのは、白のハイネックセーターに膝丈のデニムスカート、上着は薄手の淡いピンク色のジャケットにした。
鏡をのぞきこみながら髪型のチェックをする。
右側を少し編み込みにして耳にかけ、淡いピンク色のビーズがちりばめられている細目のピンで止めた。
「これでええなかぁ…」
似合っているかどうか自信は無いが、自分にしては精一杯のお洒落だ。
時計を見るともう9時30分を過ぎていた。駅まで歩いて20分。
「急がなきゃ!」
あわてて出かけた。こんな時に自転車が故障しているなんて最悪。早く直しておけば良かった。と後悔しながら早足で歩く。そのせいか、それとも緊張からか胸がドキドキして潰れそうだった。
結局、自分達の住んでいる街から少し離れた大きな街まで電車で出かけ、映画を見ることになった。なかなか行きたいところが言い出せずにいた達也くんが提案してくれたのだ。多分何気ない会話のなかで私があの映画のことを話していたのを覚えていたのだと思う。達也くんの気遣いが胸に染みた。
駅の入り口に永井くんらしき人影が見えた。
胸がひっくり返ってしまうかと思うほどドキッとした。
デニムのジャケットからグレーのパーカーをのぞかせ、黒のニット帽をかぶっている。黒の細目のパンツが足の長さを引き立てていてさらにスタイルが良く見えた。
(遠目から見ても格好いい…)
少し離れたところから立ち止まり、見とれてしまっていると、ふと永井くんがこちらを振り向き笑顔で手を振ってくれた。
(ひぇ~どぉしよう。心臓もたん)
そう思いながらも待たせてしまったことを申し訳なく思いながら小走りで近づいた。
「待たせてしまってごめんなさい。」
少し息を弾ませながら永井くんを見上げて言う。
「おはよう。そんなに待ってないけん大丈夫で。」目を細めながら優しくそう言ってくれた永井くんが私のおでこをスッと撫でた。
走ったせいで前髪がはね上がっておでこ全開になっていたのを直してくれたのだった。
「走って来てくれた?ありがとう。」
フフッと笑いながら言われた。
突然のことで何も言えず半歩下がっておでこを確かめる。
あわてている私を見てまた微笑む永井くんを横目に見ながら息を整えた。
「じゃあ、行こうか」
永井くんが駅の中を指差して言う。
「え?達也くんは?」
「え?メッセージ見てない?」
永井くんが私の顔をのぞきこみながらたずねる。
(メッセージ?)
着ていく服がなかなか決まらずあせっていた私は携帯をバックの中に入れっぱなしにしていたのだ。
あわてて取り出した携帯のメッセージアプリを確かめる。
「…え?!」
手から携帯を落としてしまいそうなほど驚いてしまった。
『妹の面倒見んといけんことになったけぇ、行けれんようになった。こっちから誘っといてごめん! ホワイトデー、光と二人で楽しんで。俺とはまた別で企画しよう!』
「何?今メッセージ見た?」
「うぅ…そう。」
ドキドキが止まらず思わず眉をひそめる。
その表情を見て不安になったのか、永井くんが顔をのぞきこみながら「二人だったら嫌かな?」暗い声で申し訳なさそうにたずねて来た。
「いゃ!違う違う!なっ永井くんの方が嫌かと思って。その…二人きりじゃったら何かデート見たいに思われて…迷惑かなぁと」
永井くんに失礼な態度を取ってしまったと思いあわてて否定する。
「フフッ。いやぁ、別に嫌じゃ無いし!って言うか光栄です!」
おどけて笑いながらそう言ってくれてホッとした。
「いゃ、エヘヘ」
取り繕って見たけど…(エヘヘってもう、変な笑いかた!)自虐的に思う。顔も真っ赤になってしまったから両手で覆い、とにかくうつむいて隠した。
その時、見つめていた自分の足先に大きなスニーカーが並んだから驚いた。
「前から思っとったけど…後藤さんて、足ちっちゃいよな。」
少ししゃがんで私の顔をのぞきこんでそう言う永井くんにまたドキッとした。(もぉ、今からこれじゃあ今日はホンマに心臓がもたんかもしれん)
「あ…うち、背が低いけぇ足もちっちゃいんよ。22.5センチ」
「えーそぉなん?俺27.5じゃわ。」
目を丸くする。
「で?身長は?何センチ?」
興味津々と言った様子でたずねられ、少し照れる。
「あっ、147センチ。小学生みたいじゃろ。へへッ。」
「ほぉ、俺とだいたい40センチぐらい違うかな?俺186センチ。」
永井くんは何だか感心した様子で首もとをかきながらそう言う。
「ひゃ、186センチ?!大きいなぁとは思っとったけど…」
「でかすぎじゃろ?!(笑)後藤さんは背も足も可愛いなぁ。じゃあ、そろそろ行こうか!」
電車が到着したばかりなのか、改札が人混みで溢れて来た。それから守るようにそっと私の背中に手を回してそう言ってくれた。
ドキッ
(かっ、可愛い?!)
また心臓が痛いほど鳴りはじめた。
…幸せ。そう思ってしまった。
緊張して朝早く目覚めたが、着ていく服が決まらないまま9時を迎えた。
「ふぅ…ホンマ何着て行こう」
スカート?パンツ?
ジャケット?コート?
あぁ!もぉ!!
と優柔不断な自分にイライラしながら、部屋を散らかしまくってやっと決めたのは、白のハイネックセーターに膝丈のデニムスカート、上着は薄手の淡いピンク色のジャケットにした。
鏡をのぞきこみながら髪型のチェックをする。
右側を少し編み込みにして耳にかけ、淡いピンク色のビーズがちりばめられている細目のピンで止めた。
「これでええなかぁ…」
似合っているかどうか自信は無いが、自分にしては精一杯のお洒落だ。
時計を見るともう9時30分を過ぎていた。駅まで歩いて20分。
「急がなきゃ!」
あわてて出かけた。こんな時に自転車が故障しているなんて最悪。早く直しておけば良かった。と後悔しながら早足で歩く。そのせいか、それとも緊張からか胸がドキドキして潰れそうだった。
結局、自分達の住んでいる街から少し離れた大きな街まで電車で出かけ、映画を見ることになった。なかなか行きたいところが言い出せずにいた達也くんが提案してくれたのだ。多分何気ない会話のなかで私があの映画のことを話していたのを覚えていたのだと思う。達也くんの気遣いが胸に染みた。
駅の入り口に永井くんらしき人影が見えた。
胸がひっくり返ってしまうかと思うほどドキッとした。
デニムのジャケットからグレーのパーカーをのぞかせ、黒のニット帽をかぶっている。黒の細目のパンツが足の長さを引き立てていてさらにスタイルが良く見えた。
(遠目から見ても格好いい…)
少し離れたところから立ち止まり、見とれてしまっていると、ふと永井くんがこちらを振り向き笑顔で手を振ってくれた。
(ひぇ~どぉしよう。心臓もたん)
そう思いながらも待たせてしまったことを申し訳なく思いながら小走りで近づいた。
「待たせてしまってごめんなさい。」
少し息を弾ませながら永井くんを見上げて言う。
「おはよう。そんなに待ってないけん大丈夫で。」目を細めながら優しくそう言ってくれた永井くんが私のおでこをスッと撫でた。
走ったせいで前髪がはね上がっておでこ全開になっていたのを直してくれたのだった。
「走って来てくれた?ありがとう。」
フフッと笑いながら言われた。
突然のことで何も言えず半歩下がっておでこを確かめる。
あわてている私を見てまた微笑む永井くんを横目に見ながら息を整えた。
「じゃあ、行こうか」
永井くんが駅の中を指差して言う。
「え?達也くんは?」
「え?メッセージ見てない?」
永井くんが私の顔をのぞきこみながらたずねる。
(メッセージ?)
着ていく服がなかなか決まらずあせっていた私は携帯をバックの中に入れっぱなしにしていたのだ。
あわてて取り出した携帯のメッセージアプリを確かめる。
「…え?!」
手から携帯を落としてしまいそうなほど驚いてしまった。
『妹の面倒見んといけんことになったけぇ、行けれんようになった。こっちから誘っといてごめん! ホワイトデー、光と二人で楽しんで。俺とはまた別で企画しよう!』
「何?今メッセージ見た?」
「うぅ…そう。」
ドキドキが止まらず思わず眉をひそめる。
その表情を見て不安になったのか、永井くんが顔をのぞきこみながら「二人だったら嫌かな?」暗い声で申し訳なさそうにたずねて来た。
「いゃ!違う違う!なっ永井くんの方が嫌かと思って。その…二人きりじゃったら何かデート見たいに思われて…迷惑かなぁと」
永井くんに失礼な態度を取ってしまったと思いあわてて否定する。
「フフッ。いやぁ、別に嫌じゃ無いし!って言うか光栄です!」
おどけて笑いながらそう言ってくれてホッとした。
「いゃ、エヘヘ」
取り繕って見たけど…(エヘヘってもう、変な笑いかた!)自虐的に思う。顔も真っ赤になってしまったから両手で覆い、とにかくうつむいて隠した。
その時、見つめていた自分の足先に大きなスニーカーが並んだから驚いた。
「前から思っとったけど…後藤さんて、足ちっちゃいよな。」
少ししゃがんで私の顔をのぞきこんでそう言う永井くんにまたドキッとした。(もぉ、今からこれじゃあ今日はホンマに心臓がもたんかもしれん)
「あ…うち、背が低いけぇ足もちっちゃいんよ。22.5センチ」
「えーそぉなん?俺27.5じゃわ。」
目を丸くする。
「で?身長は?何センチ?」
興味津々と言った様子でたずねられ、少し照れる。
「あっ、147センチ。小学生みたいじゃろ。へへッ。」
「ほぉ、俺とだいたい40センチぐらい違うかな?俺186センチ。」
永井くんは何だか感心した様子で首もとをかきながらそう言う。
「ひゃ、186センチ?!大きいなぁとは思っとったけど…」
「でかすぎじゃろ?!(笑)後藤さんは背も足も可愛いなぁ。じゃあ、そろそろ行こうか!」
電車が到着したばかりなのか、改札が人混みで溢れて来た。それから守るようにそっと私の背中に手を回してそう言ってくれた。
ドキッ
(かっ、可愛い?!)
また心臓が痛いほど鳴りはじめた。
…幸せ。そう思ってしまった。