忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
# 光side
# 光side
「やっぱ未来ちゃんは優しいなぁ~」
達也は嬉しそうに渡してくれたハンカチを口元に当てながらもう片方の手でゼリーが入った袋を高く上げて見ている。
「おぉ、ほんまなぁ…」
返事はしたものの、後藤さんが達也の口元に手を当てて心配そうに見つめていた姿が頭をよぎり、胸がキリキリと痛んだ。
部室に戻り、達也と二人でゼリーを食べる。ソーダとレモンの爽やかな味のゼリー。練習試合で疲れた体が元気になった気がした。
「ほんなら、もぉひと頑張りしますか!?」
「そーしますか!」
グランドに出ティーバッティングを始めた。
夏の予選まであと少し。甲子園に行きたいと言う夢はもちろん本物だが、その前にレギュラーに選ばれる事が一番の目標だ。達也とバッテリーを組んで。
「達也…。」
「は?」
「ホンマに狙おうで、エースナンバー。俺は正キャッチャー。」
突然声をかけられ一瞬戸惑ったような表情をしたがすぐに「あったり前じゃ!」笑って答えてくれた達也が頼もしい。
「ホンマにあちこち打ちまくってから…」
達也が打ったボールが見つからず校門の方まで探しに来ていた。
「あっ…」
後藤さんの声が聞こえた気がして振り向く。
自転車を押していた後藤さんが立ち止まっていた。
「お疲れ!今帰り?」
「うん、そぉ。まだ練習?」
「自主練な。そうそう、さっきはゼリーありがとう。美味しかったし元気が出た!」
「ホントに?それなら良かった。」
後藤さんが少しうつむいて嬉しそうに笑う。
「帰り、自転車?」
「うん、日が長いけん…あ、もしかしてボール探しとる?」
「うん、そぉ。達也のやつがむちゃくちゃ打ちまくるけぇ。」
「うち、さっき拾ったんよ。」そう言いながら自転車のかごからボールを出して渡してくれた。受け取ろうとして後藤さんの指先が手のひらに少しだけ触れた。
「ありがとう!」平静を装いながら受け取る。
「お礼に校門の外まで見送るわ!」
「えっ?いや、そんな、ボール拾っただけなのにフフッ」
後藤さんがおかしそうに笑う。お礼に、なんて口実で本当はもう少しだけ二人で居たかったのだ。
校門の外までほんのわずかな距離だが二人で並んで歩けることが嬉しい。
「後藤さん、料理ホンマに上手じゃなぁ。」
後藤さんの頬が少し赤らむ。照れている姿がなんとも言えず可愛い。
「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しい。」
見上げるようにして俺を見る姿に胸が高鳴る。達也の顔が頭をよぎった。達也の気持ちを知っているから…。
「じゃぁ、ここで」
後藤さんが笑顔で手を振る。
「おん、気をつけてな!」
俺も手を振る。
何気ないこの会話が嬉しい自分に戸惑う。最近は自然にしゃべれてるだろうか…。
後藤さんは前よりも親しく話してくれている気がする。
ボールをポンと高く放り投げて取る。今は野球に集中しよう。そう思った。
「やっぱ未来ちゃんは優しいなぁ~」
達也は嬉しそうに渡してくれたハンカチを口元に当てながらもう片方の手でゼリーが入った袋を高く上げて見ている。
「おぉ、ほんまなぁ…」
返事はしたものの、後藤さんが達也の口元に手を当てて心配そうに見つめていた姿が頭をよぎり、胸がキリキリと痛んだ。
部室に戻り、達也と二人でゼリーを食べる。ソーダとレモンの爽やかな味のゼリー。練習試合で疲れた体が元気になった気がした。
「ほんなら、もぉひと頑張りしますか!?」
「そーしますか!」
グランドに出ティーバッティングを始めた。
夏の予選まであと少し。甲子園に行きたいと言う夢はもちろん本物だが、その前にレギュラーに選ばれる事が一番の目標だ。達也とバッテリーを組んで。
「達也…。」
「は?」
「ホンマに狙おうで、エースナンバー。俺は正キャッチャー。」
突然声をかけられ一瞬戸惑ったような表情をしたがすぐに「あったり前じゃ!」笑って答えてくれた達也が頼もしい。
「ホンマにあちこち打ちまくってから…」
達也が打ったボールが見つからず校門の方まで探しに来ていた。
「あっ…」
後藤さんの声が聞こえた気がして振り向く。
自転車を押していた後藤さんが立ち止まっていた。
「お疲れ!今帰り?」
「うん、そぉ。まだ練習?」
「自主練な。そうそう、さっきはゼリーありがとう。美味しかったし元気が出た!」
「ホントに?それなら良かった。」
後藤さんが少しうつむいて嬉しそうに笑う。
「帰り、自転車?」
「うん、日が長いけん…あ、もしかしてボール探しとる?」
「うん、そぉ。達也のやつがむちゃくちゃ打ちまくるけぇ。」
「うち、さっき拾ったんよ。」そう言いながら自転車のかごからボールを出して渡してくれた。受け取ろうとして後藤さんの指先が手のひらに少しだけ触れた。
「ありがとう!」平静を装いながら受け取る。
「お礼に校門の外まで見送るわ!」
「えっ?いや、そんな、ボール拾っただけなのにフフッ」
後藤さんがおかしそうに笑う。お礼に、なんて口実で本当はもう少しだけ二人で居たかったのだ。
校門の外までほんのわずかな距離だが二人で並んで歩けることが嬉しい。
「後藤さん、料理ホンマに上手じゃなぁ。」
後藤さんの頬が少し赤らむ。照れている姿がなんとも言えず可愛い。
「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しい。」
見上げるようにして俺を見る姿に胸が高鳴る。達也の顔が頭をよぎった。達也の気持ちを知っているから…。
「じゃぁ、ここで」
後藤さんが笑顔で手を振る。
「おん、気をつけてな!」
俺も手を振る。
何気ないこの会話が嬉しい自分に戸惑う。最近は自然にしゃべれてるだろうか…。
後藤さんは前よりも親しく話してくれている気がする。
ボールをポンと高く放り投げて取る。今は野球に集中しよう。そう思った。