忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
涙 ~高校時代~
# 光side
# 光side
達也のケガの具合は気になったが駆けつけてやることもできず、とにかく必死に応援した。それでも達也と後藤さんの事が頭から離れず…
達也はまともにボールを頭にくらっていた。肩を押さえてしゃがみこんでいたから逃げる動作も取れず、本当にまともに…大丈夫だろうか…
後藤さん、達也の姿を見て取り乱していないだろうか…泣いているんだろうな…
もう何もかも不安でしかない。
試合は達也の降板からうちのチームはもうボロボロだった。
試合が終わり、みんな無言のまま球場の外に出た。ベンチ入りメンバーの皆は泣き崩れている。悔しさが拭えない。
ふと木陰に目をやると唯と亜紀が立っているのが見えた。その向こうに小さくうずくまる後藤さんがいるようだった。
「ちょ、ちょっと頼むわ。抜けさせて」
隣にいた仲間に荷物を預け後藤さん達のところに駆け寄った。
「あ…光。」
最初に気づいたのは唯だった。
「唯…後藤さん大丈夫か?」
「ふぅ…この通りどうにもこうにも、って感じ。」
後藤さんに目線を送りながら小声で言う。
「東山、救急車ではこばれたけぇ…」
本岡の声も元気が無い。
「うん。聞いた。俺もミーティング終わったら病院行ってみるわ。…それより後藤さん…」
「達也のお母さんが声をかけてくれて、みぃだけ救護室で達也に会ったんよ。多分相当ひどい状態だったみたいで…」
唯が目元を手で押さえながらポツポツとその後の様子を教えてくれた。
「うん。そっか…。」
かなりショックを受けている様子の後藤さんは今にも消えてしまいそうなほど憔悴しきっている。
掛ける言葉は見つからないが、とにかく少しでも元気づけてあげたいと思った俺は後藤さんの傍にそっと近寄った。
しゃがみこんで頭を膝に埋めているから表情は見えない。
向かい側にしゃがみ、そっと後藤さんの頬に触れた。
ハッとしたように上げた後藤さんの顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。その涙を指で拭う。
「永井くん。達也くんな…達也くん救急車で運ばれてしもぉた。」
声は小さく、振るえている。
「うん。そうなんじゃってな。」
「顔の傷口を押さえとるタオル、血だらけで…」後藤さんは口元に手を当て不安そうに話す。その手はガクガクと振るえている。
「…うん。」
「それなのにな…それなのに達也くん、うちのことばっかり心配して…痛いのに。絶対痛いし辛いのに!」
目を固くつぶり震える声で自分を責めるように言う後藤さん。
掛ける言葉が本当に見つからず、背中をさすることしか出来ない。
しばらくそうしているうちに応援バスはもう出発する時間が来たようだった。
あせった俺はとりあえず両手で肩を支えながら後藤さんを立ち上がらせバスまでそのまま付き添った。
「俺、帰る前に病院寄ってみようと思う。後藤さんも一緒に行く?」
後藤さんがバスに乗り込む前に思いついてそう声をかけてみた。
後藤さんが小さくうなずいたのがわかり「後で電話する!」
そう言って別れた。
達也のケガの具合は気になったが駆けつけてやることもできず、とにかく必死に応援した。それでも達也と後藤さんの事が頭から離れず…
達也はまともにボールを頭にくらっていた。肩を押さえてしゃがみこんでいたから逃げる動作も取れず、本当にまともに…大丈夫だろうか…
後藤さん、達也の姿を見て取り乱していないだろうか…泣いているんだろうな…
もう何もかも不安でしかない。
試合は達也の降板からうちのチームはもうボロボロだった。
試合が終わり、みんな無言のまま球場の外に出た。ベンチ入りメンバーの皆は泣き崩れている。悔しさが拭えない。
ふと木陰に目をやると唯と亜紀が立っているのが見えた。その向こうに小さくうずくまる後藤さんがいるようだった。
「ちょ、ちょっと頼むわ。抜けさせて」
隣にいた仲間に荷物を預け後藤さん達のところに駆け寄った。
「あ…光。」
最初に気づいたのは唯だった。
「唯…後藤さん大丈夫か?」
「ふぅ…この通りどうにもこうにも、って感じ。」
後藤さんに目線を送りながら小声で言う。
「東山、救急車ではこばれたけぇ…」
本岡の声も元気が無い。
「うん。聞いた。俺もミーティング終わったら病院行ってみるわ。…それより後藤さん…」
「達也のお母さんが声をかけてくれて、みぃだけ救護室で達也に会ったんよ。多分相当ひどい状態だったみたいで…」
唯が目元を手で押さえながらポツポツとその後の様子を教えてくれた。
「うん。そっか…。」
かなりショックを受けている様子の後藤さんは今にも消えてしまいそうなほど憔悴しきっている。
掛ける言葉は見つからないが、とにかく少しでも元気づけてあげたいと思った俺は後藤さんの傍にそっと近寄った。
しゃがみこんで頭を膝に埋めているから表情は見えない。
向かい側にしゃがみ、そっと後藤さんの頬に触れた。
ハッとしたように上げた後藤さんの顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。その涙を指で拭う。
「永井くん。達也くんな…達也くん救急車で運ばれてしもぉた。」
声は小さく、振るえている。
「うん。そうなんじゃってな。」
「顔の傷口を押さえとるタオル、血だらけで…」後藤さんは口元に手を当て不安そうに話す。その手はガクガクと振るえている。
「…うん。」
「それなのにな…それなのに達也くん、うちのことばっかり心配して…痛いのに。絶対痛いし辛いのに!」
目を固くつぶり震える声で自分を責めるように言う後藤さん。
掛ける言葉が本当に見つからず、背中をさすることしか出来ない。
しばらくそうしているうちに応援バスはもう出発する時間が来たようだった。
あせった俺はとりあえず両手で肩を支えながら後藤さんを立ち上がらせバスまでそのまま付き添った。
「俺、帰る前に病院寄ってみようと思う。後藤さんも一緒に行く?」
後藤さんがバスに乗り込む前に思いついてそう声をかけてみた。
後藤さんが小さくうなずいたのがわかり「後で電話する!」
そう言って別れた。