忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~

# 光side

♯ 光side

達也のために涙を流す後藤さんの姿を今日は何度見ただろう。後藤さんの頭のなかはもう達也の事で一杯なようで…ただ傍にいることしか出来ない自分がもどかしい。

思わず抱き締めてしまった震えている細い背中が愛しい。愛しいけど遠い…。

後藤さんに拒絶するような言葉をかけたのも、もしかしたら達也なりの優しさだったのかもしれない。


自分の弱っている姿を見せたくない。
これ以上心配かけたくない。
自分が泣かせてしまうくらいなら傍にいない方がいい。

そんなところだろう。あいつのことだ。きっと。

後藤さんを乗せた車を見送った後、頭を抱えてしばらくの間座り込んでいた。

ふと達也の病室辺りの窓を見上げる。
達也の目はもう本当に…?

夢なら覚めて欲しい。


無理をしていることに気づいていたのに止めきれなかった自分にも責任がある気がした。
俺はその場から動けずにいた。

途方に暮れる自分を抱えきれず…。
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