忘れるための時間     始めるための時間     ~すれ違う想い~

# 光side

# 光side

同じクラスなのは、正直辛かった。二人が付き合い始める前ならきっと嬉しかったはず。
でも今は…辛い。…苦しい。
忘れなければ、と思うのについつい後藤さんのことを思ってしまう。
見てはいけない、とわかっているけど目が後藤さんを追いかけてしまう。

それに…仲が良さそうな二人の幸せそうな姿を近くで見ると胸がギュッと握りつぶされたように痛い。でも、その気持ちを絶対に表に出してはいけないことが何よりも一番辛かった。

それでも俺は、後藤さんが幸せならそれでいいのだと、そう思っていた。自分には何も出来ないけれど…

今朝も俺なりに勇気を出して平静を装いあいさつをしたけど、何となく後藤さんの様子がおかしいような気がした。

(達也が違うクラスになって不安なんかもしれん…。)
そう思った。

やはり俺では後藤さんの不安を安心に変えてあげることは出来ないのだ。少し落ち込む。

それなのに、学級委員を一緒にすることになるなんて。先生を少し恨みながら心の隅で神様に感謝している自分がいる。
自分の後藤さんに対する思いは自分ではもうどうしようも無いことは十分わかっているし、せめてひっそりと二人だけの思い出が作れるかもしれない そんな淡い期待をした。
そのくらい…神様もゆるしてくれるだろう。

お昼休み、達也が顔をのぞかせると後藤さんが泣きそうな表情を見せたのがわかった。
思わず席を立とうとしてしまったが、そんな後藤さんの様子に気づいたのだろう、達也がさりげなくかばいながら教室から連れ出していった。

あいつの優しさとその優しさに信頼を寄せている後藤さん。その二人のまとう雰囲気に入り込む隙は…無い。
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