忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
最後の夏 ~高校時代~
# 未来side
# 未来side
熱気をおびた風が髪を揺らす。砂ぼこりの混じったその風は夏の香りがした。
今日はクッキング部があり、チーズムースを作っていた。冷蔵庫で冷やしている間ふと窓の外に目を向けると野球部が練習をしている姿が遠くに見えた。開け放した窓に近づくと活気のある声が響いてきた。 この窓から達也くんや永井くんが声をかけてくれていたあの頃を思い出して胸がギュッと捕まれたように痛くなる。
あんなに仲の良かった二人が、今は目も合わせない…。昨日も委員会があり、同じ教室に集まったが、達也くんは永井くんの事をスルーして私にだけ話しかけていた。
「あんなに仲良しじゃったのになぁ…」
ため息を付きながら窓枠に両手をつく。
「今日は何作ったん?」
「キャッ」
ふいに窓の外から声をかけられ思わず声をあげて驚いてしまった。
「驚かせてごめん。外見とったけん、俺に気づいとるかと思っとった~」
苦笑いしながら頭をかく永井くんが立っていた。
「いや、うち、ボーっとしとったけぇ気づかんで…永井くん休憩中?」
「うん。まだ6月なのにあんまり暑いけぇ…ちょっと木陰で休もうかと思って。」
「暑いなぁ、今日も。…あ、今日チーズムースなん。良かったら食べる?」
「え?!もらってえん?やった!」
永井くんが垂れ気味の大きな目を細めて嬉しそうに笑う。
クラス役員を一緒にするようになってからさすがに少しずつ永井くんと話すことに慣れてきていた。
冷蔵庫から冷やしたチーズムースを取り出し、冷たいお茶をコップに入れお盆にのせて一緒に渡す。
「美味しいかどうかわからんけど…」
「おー!美味しそう!お茶までありがとう。」そう言うとスプーンで大きくすくい取りパックと食べた。
「ん~!美味しい!!まじで生き返る。」
大きな口でパクパクと凄い勢いで食べて行く永井くんを見て思わず笑ってしまった。
永井くんはそのまま一気にお茶まで飲み干し、ひと息ついてから「ごちそうさま。おいしかった。」と礼儀正しく器とコップを返してくれた。
「クスクス。美味しそうに食べてくれてありがとう。」
「な、笑わんでよ~マジで死にそうだったんじゃけぇ」
テレる永井くんを可愛いと思ってしまう。
そんな永井くんに見とれていたせいで持っていたお盆が傾きバランスが崩れてコップが落ちそうになった。
「あっ!」
慌ててコップをつかむと永井くんも同時にコップをつかんだ。…正確にはコップをつかんだ私の手をつかんだのだ…
いっぺんに顔が赤くなってしまった事が自分でもわかる。
「あっぶなぁ~。良かった落ちんで。」
永井くんは私の手をつかんだままフッと笑う。
「うっうん。良かった…」
「…じゃあ…そろそろ行くけぇ。」
「うん。練習頑張って。」
しばらく間があいてそう言うと永井くんもまたしばらく間をあけて
「…今年こそ…今年こそレギュラーで出れるように頑張るけぇ…」
振り絞るようにそう言い、ギュッと力を入れてにぎってから手を離した。
「じゃ。」軽く手を上げグランドに向けて走って行ってしまった。
「頑張って!」
走り去る後ろ姿にそう声をかける。
永井くんはチラッと振り向きまた軽く手を上げて走っていった。
残された私は胸の高鳴りが押さえきれず、しばらくその場に立ち尽くしていた。
握られた方の手にまだ永井くんのゴツゴツとした大きな手のひらの感触が残っていた…。
いけんのに。ドキドキしたら、いけんのに…。
熱気をおびた風が髪を揺らす。砂ぼこりの混じったその風は夏の香りがした。
今日はクッキング部があり、チーズムースを作っていた。冷蔵庫で冷やしている間ふと窓の外に目を向けると野球部が練習をしている姿が遠くに見えた。開け放した窓に近づくと活気のある声が響いてきた。 この窓から達也くんや永井くんが声をかけてくれていたあの頃を思い出して胸がギュッと捕まれたように痛くなる。
あんなに仲の良かった二人が、今は目も合わせない…。昨日も委員会があり、同じ教室に集まったが、達也くんは永井くんの事をスルーして私にだけ話しかけていた。
「あんなに仲良しじゃったのになぁ…」
ため息を付きながら窓枠に両手をつく。
「今日は何作ったん?」
「キャッ」
ふいに窓の外から声をかけられ思わず声をあげて驚いてしまった。
「驚かせてごめん。外見とったけん、俺に気づいとるかと思っとった~」
苦笑いしながら頭をかく永井くんが立っていた。
「いや、うち、ボーっとしとったけぇ気づかんで…永井くん休憩中?」
「うん。まだ6月なのにあんまり暑いけぇ…ちょっと木陰で休もうかと思って。」
「暑いなぁ、今日も。…あ、今日チーズムースなん。良かったら食べる?」
「え?!もらってえん?やった!」
永井くんが垂れ気味の大きな目を細めて嬉しそうに笑う。
クラス役員を一緒にするようになってからさすがに少しずつ永井くんと話すことに慣れてきていた。
冷蔵庫から冷やしたチーズムースを取り出し、冷たいお茶をコップに入れお盆にのせて一緒に渡す。
「美味しいかどうかわからんけど…」
「おー!美味しそう!お茶までありがとう。」そう言うとスプーンで大きくすくい取りパックと食べた。
「ん~!美味しい!!まじで生き返る。」
大きな口でパクパクと凄い勢いで食べて行く永井くんを見て思わず笑ってしまった。
永井くんはそのまま一気にお茶まで飲み干し、ひと息ついてから「ごちそうさま。おいしかった。」と礼儀正しく器とコップを返してくれた。
「クスクス。美味しそうに食べてくれてありがとう。」
「な、笑わんでよ~マジで死にそうだったんじゃけぇ」
テレる永井くんを可愛いと思ってしまう。
そんな永井くんに見とれていたせいで持っていたお盆が傾きバランスが崩れてコップが落ちそうになった。
「あっ!」
慌ててコップをつかむと永井くんも同時にコップをつかんだ。…正確にはコップをつかんだ私の手をつかんだのだ…
いっぺんに顔が赤くなってしまった事が自分でもわかる。
「あっぶなぁ~。良かった落ちんで。」
永井くんは私の手をつかんだままフッと笑う。
「うっうん。良かった…」
「…じゃあ…そろそろ行くけぇ。」
「うん。練習頑張って。」
しばらく間があいてそう言うと永井くんもまたしばらく間をあけて
「…今年こそ…今年こそレギュラーで出れるように頑張るけぇ…」
振り絞るようにそう言い、ギュッと力を入れてにぎってから手を離した。
「じゃ。」軽く手を上げグランドに向けて走って行ってしまった。
「頑張って!」
走り去る後ろ姿にそう声をかける。
永井くんはチラッと振り向きまた軽く手を上げて走っていった。
残された私は胸の高鳴りが押さえきれず、しばらくその場に立ち尽くしていた。
握られた方の手にまだ永井くんのゴツゴツとした大きな手のひらの感触が残っていた…。
いけんのに。ドキドキしたら、いけんのに…。