忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
#未来side
# 未来side
無心で渡り廊下まで走ったところで足の力が抜けてしまいヘナヘナと座り込む。
達也くんの表情と無理やりキスをされたことを思い出し怖さで震えた。
そして…ちぎれたエプロンの紐を握りしめながら自分が情けなく涙が溢れだした。
達也くんに見られた…二人でいる姿を。きっと私の表情を見て気づいてしまったんだ…私がしまい込んでいる気持ちに…。
傷つけてしまったはずだ。
少し砂ぼこりが積もった渡り廊下のコンクリートにポタポタと涙が染み込む。
「…未来ちゃん」
心配そうな声が後ろから聞こえる。
振り向かなくても誰だかわかる。私のことをこんな風に呼ぶ男の子は達也くんだけだ。
それでも怖さとと申し訳なさと情けなさと、いろいろ入り交じった感情でとても後ろを振り返ることは出来なかった。
そっと肩に手をあてられ、それが達也くんだと分かっているはずなのに反射的に避けてしまった。
さっと手を引き「ごめん…怖がらせて」
カタカタと震える体を自分で抱きしめながら何とか立ち上がり、達也くんの方を向く。
「ううん…ごめんなさい。うち…ホントに…」
涙が溢れてうまく言葉にならない。
達也くんはそろりと近づき
「抱きしめてもええかな?」
優しく…控えめにたずねる。
いつもの達也くんだ。
返事はできずコクンとうなづく。
達也くんがふんわりと優しく抱きしめてきた。さっきの恐怖心はなくなり、あたたかさが伝わる。そっと身を預けた。
「未来ちゃん。俺、見てしもうて…二人が手を握っとるとこ。戸が開いとったけぇ」
(やっぱり!)胸がドキッとなる。
「偶然なのもホントは分かっとる。分かっとるけど…未来ちゃんの表情見て俺…」
心臓がすごい早さで音をたてる。
達也くんの心臓の音も早まっているのを感じた。
足が震えて立っているのがやっとな感じになってきた。
それに気づいたのか達也くんが抱きしめる腕に力を込めた。
「未来ちゃん。未来ちゃんはあいつのこと…光のこと好きなんか? そうじゃろ?」
達也くんが苦しそうにそう言った。
核心を突かれ、もう隠せないと思った。
「…ごめんなさい。」
震える声でそう答えたその時
カシャン 何かが落ちる音がした。
音がする方を向くとテニスラケットが転がっていて、この先に顔面蒼白な唯が立っていた。
達也くんはバツが悪そうにそっと離れ、私をかばうように背中に隠した。
「おぉ、唯! 修羅場見られてしもぉた?」
おどけて言う達也くんを押し退け、唯が私の目の前に立った。
怒ったような顔をしている。
「唯、あの…これは…」
「どぉ言うこと?!」
私の言い訳を遮り怒鳴り付ける。
「みぃが…みぃが光を?」
唯は永井くんのことが好きなんだから嫌な思いをさせてしまったのだろうと焦った。
「唯…ごめん。」
あわてて口にする。
「ごめんて何?ごめんて!何に謝って?こんなに達也に大切にしてもらって、こんなに愛されとって…それなのに何で?!達也の事が好きなんじゃなかったん?!」
震える手で痛いほど肩をつかみ、怒りを露にそう言う唯に少し驚く。
唯にこんなにせめられるのは初めてだ。
「…。」
何も言えずハラハラと涙がこぼれ落ちるだけ。
達也くんがあわてて間に入ろうとする。
「まっ、まって 唯!これは俺と未来ちゃんの問題であって、未来ちゃんだけのせいじゃないし、な、未来ちゃん。」
どこまでも優しい人。傷つけてしまったのについ頼ってしまいそうになり達也くんに手を差しのべた。
「ええかげんにしたら?!」
怒鳴りながらその手をパチンとはたかれた。
初めてそんなことをされて手も痛いが心もズキンと痛んだ。
「大丈夫?未来ちゃん!」
達也くんが素早くはたかれた私の手をさする。
「どういうつもりで甘えるん?ひどい!ホントにひどい!うちがどんな気持ちで…」
そこまで言うと唯の頬を大粒の涙が流れ落ちた。
「…唯?」
「…クッ。みぃじゃから…相手がみぃじゃからうち、あきらめたのに…。」
(え?! あきらめた?!)
驚きすぎて声がでない。
「うち、一年生の時からずっと、ずっと達也の事が好きだった!でも、達也がみぃのこと好きなの知って…それでもあきらめきれずに誰にも言わずに…ずっとずっと好きだった。達也と、みぃが付き合うことになって、二人が幸せならそれでええって…それでも好きで…苦しゅうて…」
予想外の唯の告白に達也くんも驚いた様子で何も言えずにいた。
「ひどい!ほんまに!許せん!許さんけぇ!」そう言うとラケットを乱暴につかみ取り振り向きもせず走り去って行った。
私たちはその後ろ姿を何も言えず見送り、黙ったまましばらく立ち尽くしていた。
唯の好きな人が達也くんだったなんて…
無心で渡り廊下まで走ったところで足の力が抜けてしまいヘナヘナと座り込む。
達也くんの表情と無理やりキスをされたことを思い出し怖さで震えた。
そして…ちぎれたエプロンの紐を握りしめながら自分が情けなく涙が溢れだした。
達也くんに見られた…二人でいる姿を。きっと私の表情を見て気づいてしまったんだ…私がしまい込んでいる気持ちに…。
傷つけてしまったはずだ。
少し砂ぼこりが積もった渡り廊下のコンクリートにポタポタと涙が染み込む。
「…未来ちゃん」
心配そうな声が後ろから聞こえる。
振り向かなくても誰だかわかる。私のことをこんな風に呼ぶ男の子は達也くんだけだ。
それでも怖さとと申し訳なさと情けなさと、いろいろ入り交じった感情でとても後ろを振り返ることは出来なかった。
そっと肩に手をあてられ、それが達也くんだと分かっているはずなのに反射的に避けてしまった。
さっと手を引き「ごめん…怖がらせて」
カタカタと震える体を自分で抱きしめながら何とか立ち上がり、達也くんの方を向く。
「ううん…ごめんなさい。うち…ホントに…」
涙が溢れてうまく言葉にならない。
達也くんはそろりと近づき
「抱きしめてもええかな?」
優しく…控えめにたずねる。
いつもの達也くんだ。
返事はできずコクンとうなづく。
達也くんがふんわりと優しく抱きしめてきた。さっきの恐怖心はなくなり、あたたかさが伝わる。そっと身を預けた。
「未来ちゃん。俺、見てしもうて…二人が手を握っとるとこ。戸が開いとったけぇ」
(やっぱり!)胸がドキッとなる。
「偶然なのもホントは分かっとる。分かっとるけど…未来ちゃんの表情見て俺…」
心臓がすごい早さで音をたてる。
達也くんの心臓の音も早まっているのを感じた。
足が震えて立っているのがやっとな感じになってきた。
それに気づいたのか達也くんが抱きしめる腕に力を込めた。
「未来ちゃん。未来ちゃんはあいつのこと…光のこと好きなんか? そうじゃろ?」
達也くんが苦しそうにそう言った。
核心を突かれ、もう隠せないと思った。
「…ごめんなさい。」
震える声でそう答えたその時
カシャン 何かが落ちる音がした。
音がする方を向くとテニスラケットが転がっていて、この先に顔面蒼白な唯が立っていた。
達也くんはバツが悪そうにそっと離れ、私をかばうように背中に隠した。
「おぉ、唯! 修羅場見られてしもぉた?」
おどけて言う達也くんを押し退け、唯が私の目の前に立った。
怒ったような顔をしている。
「唯、あの…これは…」
「どぉ言うこと?!」
私の言い訳を遮り怒鳴り付ける。
「みぃが…みぃが光を?」
唯は永井くんのことが好きなんだから嫌な思いをさせてしまったのだろうと焦った。
「唯…ごめん。」
あわてて口にする。
「ごめんて何?ごめんて!何に謝って?こんなに達也に大切にしてもらって、こんなに愛されとって…それなのに何で?!達也の事が好きなんじゃなかったん?!」
震える手で痛いほど肩をつかみ、怒りを露にそう言う唯に少し驚く。
唯にこんなにせめられるのは初めてだ。
「…。」
何も言えずハラハラと涙がこぼれ落ちるだけ。
達也くんがあわてて間に入ろうとする。
「まっ、まって 唯!これは俺と未来ちゃんの問題であって、未来ちゃんだけのせいじゃないし、な、未来ちゃん。」
どこまでも優しい人。傷つけてしまったのについ頼ってしまいそうになり達也くんに手を差しのべた。
「ええかげんにしたら?!」
怒鳴りながらその手をパチンとはたかれた。
初めてそんなことをされて手も痛いが心もズキンと痛んだ。
「大丈夫?未来ちゃん!」
達也くんが素早くはたかれた私の手をさする。
「どういうつもりで甘えるん?ひどい!ホントにひどい!うちがどんな気持ちで…」
そこまで言うと唯の頬を大粒の涙が流れ落ちた。
「…唯?」
「…クッ。みぃじゃから…相手がみぃじゃからうち、あきらめたのに…。」
(え?! あきらめた?!)
驚きすぎて声がでない。
「うち、一年生の時からずっと、ずっと達也の事が好きだった!でも、達也がみぃのこと好きなの知って…それでもあきらめきれずに誰にも言わずに…ずっとずっと好きだった。達也と、みぃが付き合うことになって、二人が幸せならそれでええって…それでも好きで…苦しゅうて…」
予想外の唯の告白に達也くんも驚いた様子で何も言えずにいた。
「ひどい!ほんまに!許せん!許さんけぇ!」そう言うとラケットを乱暴につかみ取り振り向きもせず走り去って行った。
私たちはその後ろ姿を何も言えず見送り、黙ったまましばらく立ち尽くしていた。
唯の好きな人が達也くんだったなんて…