忘れるための時間 始めるための時間 ~すれ違う想い~
# 光side
# 光side
突然達也が現れて本当に驚いた。
元気なんだろう、とは思っていたけど…まるで15年の月日が無かったかのように現れて…
そのまま後藤さんを連れていってしまうなんて。嫉妬なのか…嫉妬と呼べるかどうか分からない感情が胸のなかを渦巻く。
俺だって後藤さんとの再会はつい最近だったのに。また少しずつ話が出来るようになればいいなと、淡い期待を持ち初めて間がないのに…何となくしっくり来るような二人の後ろ姿が目に痛い。
ユリのプラカードを持った入場行進を見たいという気持ちは本当だったけど、半分は…いや、半分以上はもしかしたら後藤さんに会えるかもしれない、という期待を抱いて今日ここに来ていた。
やっと会えたのに。
「ふぅ…」タメ息が自然に出る。
伝えられない気持ちが抱えきれないほど大きく膨らんでいる。後藤さんの事を思うとこんなにも胸がしめつけられるほど…好きで…いや、好きだと言う言葉では表せないほどだった。
それが伝えられないのは自分の弱さだろう。
弱虫なくせに二人が何を話しているのか気になって仕方ない。
俺は本当に弱虫だ。
15年前の夏もそうだった…
達也と後藤さんが別れたらしいと聞いて動揺していた。何故別れたのかは気になったし、あの調理室での出来事が原因の一端なのかもしれないと心配もしていた。
でも、自分なんて後藤さんの何の力にもなれないだろう。
そう思っていたある日、達也に呼び出され屋上に向かった。
夏大の、開幕まであと1週間という時だった。昼休みの屋上は照りつける夏の太陽のせいでジリジリと暑かった。
おかげで人影は見えない。
達也とこうやって話すのはいつぶりだろう…と考えていた。
「なぁ、光。」
俺の目をまっすぐに見て達也が話しかける。
「…おぉ。何?話って。」
思わず目をそらしてしまった。
「お前なぁ、未来ちゃんに告白せんの?」
あまりにも予想外の言葉に驚きすぎて目を見開き達也を見つめる。
「好きなんじゃろ?未来ちゃんのこと」
今度は達也が目をそらし、雲ひとつない青空を見上げながら言った。
「…いゃ、でも…俺なんか…」
達也の言葉の真意を図りかねて何も言えない。
「俺は正直、今でも未来ちゃんが好きじゃ。ホンマに、大切にしたい。そう思っとる。」
まだ空を眺めたまま独り言のように言う。
「…おぉ。そぉなんか。」
胸がズキズキする。
親友と同じ人を好きになるなんて思っていなかったし、実際にそうなると、本当にどうしていいか分からない。
はっきりと好きじゃと言える達也の素直さと強さがうらやましいと思った。
達也がくるりとこちらを振り返り、俺の目をまっすぐに見つめて来た。
「なぁ、夏大、応援来てって、誘えや!絶対にな。」
そう言うと肩をポンと叩いて俺の横を通りすぎる。
その時一瞬足を止めて
「俺は小さいやつじゃけん、野球も出来んよぉになって、未来ちゃんとも別れて…しばらくお前と普通にしゃべる自信ないけぇ」
そう言うともう振り向きもせず後ろ手に手を振って屋上から出て行った。
一方的に達也が喋り、俺はふがいない返事をしただけだった。
それでも、と思い 勇気を振り絞って後藤さんを応援に誘ったが…
来てくれなかった。
そしてさらに自信を無くした俺は何も伝えられないまま卒業してしまったのだった。
達也とは卒業後、連絡は取っていない。
しばらくして気になり電話をかけたときにはすでに番号が変わっていて「お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません」という乾いたアナウンスが流れてきて不安になり実家をたずねたが、浪人して東京の予備校に入学したはずなのにそれから勝手に予備校を辞め、引っ越しもしてしまい連絡が取れないのだそうで…時々気まぐれに電話はしてくるが、大丈夫元気にしてる と言うだけでどこにいて何をしてるとも言わないのだということだった。
それが急に今になって現れるとは…
突然達也が現れて本当に驚いた。
元気なんだろう、とは思っていたけど…まるで15年の月日が無かったかのように現れて…
そのまま後藤さんを連れていってしまうなんて。嫉妬なのか…嫉妬と呼べるかどうか分からない感情が胸のなかを渦巻く。
俺だって後藤さんとの再会はつい最近だったのに。また少しずつ話が出来るようになればいいなと、淡い期待を持ち初めて間がないのに…何となくしっくり来るような二人の後ろ姿が目に痛い。
ユリのプラカードを持った入場行進を見たいという気持ちは本当だったけど、半分は…いや、半分以上はもしかしたら後藤さんに会えるかもしれない、という期待を抱いて今日ここに来ていた。
やっと会えたのに。
「ふぅ…」タメ息が自然に出る。
伝えられない気持ちが抱えきれないほど大きく膨らんでいる。後藤さんの事を思うとこんなにも胸がしめつけられるほど…好きで…いや、好きだと言う言葉では表せないほどだった。
それが伝えられないのは自分の弱さだろう。
弱虫なくせに二人が何を話しているのか気になって仕方ない。
俺は本当に弱虫だ。
15年前の夏もそうだった…
達也と後藤さんが別れたらしいと聞いて動揺していた。何故別れたのかは気になったし、あの調理室での出来事が原因の一端なのかもしれないと心配もしていた。
でも、自分なんて後藤さんの何の力にもなれないだろう。
そう思っていたある日、達也に呼び出され屋上に向かった。
夏大の、開幕まであと1週間という時だった。昼休みの屋上は照りつける夏の太陽のせいでジリジリと暑かった。
おかげで人影は見えない。
達也とこうやって話すのはいつぶりだろう…と考えていた。
「なぁ、光。」
俺の目をまっすぐに見て達也が話しかける。
「…おぉ。何?話って。」
思わず目をそらしてしまった。
「お前なぁ、未来ちゃんに告白せんの?」
あまりにも予想外の言葉に驚きすぎて目を見開き達也を見つめる。
「好きなんじゃろ?未来ちゃんのこと」
今度は達也が目をそらし、雲ひとつない青空を見上げながら言った。
「…いゃ、でも…俺なんか…」
達也の言葉の真意を図りかねて何も言えない。
「俺は正直、今でも未来ちゃんが好きじゃ。ホンマに、大切にしたい。そう思っとる。」
まだ空を眺めたまま独り言のように言う。
「…おぉ。そぉなんか。」
胸がズキズキする。
親友と同じ人を好きになるなんて思っていなかったし、実際にそうなると、本当にどうしていいか分からない。
はっきりと好きじゃと言える達也の素直さと強さがうらやましいと思った。
達也がくるりとこちらを振り返り、俺の目をまっすぐに見つめて来た。
「なぁ、夏大、応援来てって、誘えや!絶対にな。」
そう言うと肩をポンと叩いて俺の横を通りすぎる。
その時一瞬足を止めて
「俺は小さいやつじゃけん、野球も出来んよぉになって、未来ちゃんとも別れて…しばらくお前と普通にしゃべる自信ないけぇ」
そう言うともう振り向きもせず後ろ手に手を振って屋上から出て行った。
一方的に達也が喋り、俺はふがいない返事をしただけだった。
それでも、と思い 勇気を振り絞って後藤さんを応援に誘ったが…
来てくれなかった。
そしてさらに自信を無くした俺は何も伝えられないまま卒業してしまったのだった。
達也とは卒業後、連絡は取っていない。
しばらくして気になり電話をかけたときにはすでに番号が変わっていて「お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません」という乾いたアナウンスが流れてきて不安になり実家をたずねたが、浪人して東京の予備校に入学したはずなのにそれから勝手に予備校を辞め、引っ越しもしてしまい連絡が取れないのだそうで…時々気まぐれに電話はしてくるが、大丈夫元気にしてる と言うだけでどこにいて何をしてるとも言わないのだということだった。
それが急に今になって現れるとは…