住みますか、住みませんか。
「ところでオギノさん」
「はい?」
顔をあげると、そこに、営業部の羽鳥さんがいた。
今しがたわたしに領収書を渡してきた人物。
スタイリッシュな眼鏡をかけた先輩だが、まだいたんですね。
「オギノさんも。アイツ狙い?」
「……へ」
「めちゃくちゃ見てるし」
ヤバいチヒロくんのことガン見してしまった。仕事中は集中しようと決めているのに。
「ちがっ……」
ちがわなくは、ないです。
狙っているというよりは、捕まえておきたいと言った方が正しい。
「今夜。少しでいいから時間とれないかな」
ん?
「ちょっと君に話したいことがあって」
わたしに? 羽鳥さんが?
「なんでしょうか」
まったくなにを言われるかわからない。
え、仕事中の態度に問題あったり!?
「ああ、かまえなくていいよ。完全にプライベートな相談だから」
――――相談?