住みますか、住みませんか。

 羽鳥さんの前にはロックグラス。


「乾杯」と言われ、グラスを羽鳥さんのグラスに軽く近づける。


 羽鳥さんが自分のお酒を飲んだのを確認すると、わたしもカクテルグラスに口をつけようとしたら。


 んん?

 グラスの縁に、なにかついているぞ。


 少し、舐めてみる。……しょっぱい。


「塩、ですね」

「正解」

「それに。この中のフルーツは、ブドウですか」

「そうだよ」


 デザート系のカクテルなのかな。

 居酒屋の飲み放題メニューではまずお目にかかれない代物だ。


 よく見るとカウンターの向かい側には多くのリキュールが並んでいて、バーテンダーさんの表彰状みたいなものも飾ってある。


 あ、あれ、シェイカーだ。

 と店内を見渡しているとバーテンダーさんがアイスピックで氷を砕き始めた。


 ここ、特等席だなあ?


「珍しい? こういう店は」

「あ、はい。……初めてです」

「へえ」

「美味しいです。飲みやすいし。見た目もお洒落で。味わったことのない風味なんですよね」

「葡萄のマティーニだね。使っているのはジンとドライベルモット。たしかに飲みやすくは作ってもらっているけど、それをグイッといけちゃうってことは。けっこう飲める口?」

「……弱くはない、です」
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