おやすみのキスがないと眠れない。
1.寝る前の甘い言葉



「ねぇ、おやすみのキスは?」



ある日の夜、言われたその言葉に、私、中村 陽葵(なかむら ひまり)の思考回路は止まった。


何を言っているの?


私の聞き間違い?



「あれ?聞こえてる?」



おーいと、目の前で私の顔を覗き込んでくるこの男は、瀬戸内 圭人(せとうち けいと)。


ぱっちり二重に真っ黒の髪、色の白い肌は私よりもキメ細かい。


今、私は、訳あって圭人と2人で暮らしている。


つまり、同棲と言うやつだ。



「陽葵?俺を無視するとかいい度胸じゃん?」


「うわぁー!聞こえてる!聞こえてるから!」



突然、私のほっぺをギューッと引っ張ってきた。


手加減されているだろうけれど、そんなに引っ張られたら赤くなっちゃう。



「相変わらず、モチみてぇだな......」


「はなひてよ~」



何故かムニムニと揉み込まれている。


ーー何がしたいのだろうか。


ある程度触って、満足したらしく、離された時には綺麗に赤くなっていた。



「もう、赤くなっちゃったじゃん!」


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