おやすみのキスがないと眠れない。



「ーーり、陽葵!」


「ふぁい!」



固まりながらも、意識しないよう集中していた私の耳に、圭人の声が届き、慌てて下を見る。



「聞いてた?」


「......ごめんなさい」



見透かしたような目で見られて、正直に言うしか無かった。


でも、私が集中できなかった原因は、圭人にもあると思う。


圭人が膝枕なんて、してこなければ集中出来たのだからーー。



「はぁ......しらないよ?」


「見捨てないでっ!ちゃんと覚えるから、もう1回ーー」



教えて......。そう言おうとしたのに、タイミングが良いのか、悪いのかチャイムが鳴った。



「うそ......」



このチャイムは、昼休みが終わる事を示している。


そして、5分後にはもう一度チャイムがなり、5時間目が始まる。



「時間切れだね」


「覚えられなかった......」



これじゃ、当てられても答えられない。


いや、でも、急いで戻ったら少しは教科書見れるかも?



「じゃあ、もどーー」


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