おやすみのキスがないと眠れない。
よっこいしょっと、頭を上げた圭人を遮って、立ち上がる。
「圭人、私先に行くね!少しでも覚えないと!」
「っと、まってよ」
ランチバックを掴み、走って戻ろうとしたのに、1歩目で圭人に捕まった。
「そんな急いで戻ったところで、どうせ覚える時間なんてないよ」
だから、一緒に行こう?と掴んだ手を離してくれない。
まだ、ベンチに座っている圭人は、私より目線が低いので、必然的に上目遣いになっている。
「......っ」
そんな目で見られたら、置いて行くなんてできない。
「まぁ、安心しなよ。いざとなったら俺が助けてあげるから」
そう、微笑まれて顔を覗き込んできた。
この、イケメンにこんな事をされて、赤面しない人は居ないと思う。
私も絶賛、その1人だ。
「あれ?陽葵、顔赤くない?」
「......っ、誰のせいだとーー」
いつの間にか立ち上がっている圭人を、キッと睨みあげる。
思ったよりも近かった距離に、私は更に顔が熱くなった気がした。