おやすみのキスがないと眠れない。
「ははっ、リンゴみたいだな。じゃあ、俺寝るから」
何が、じゃあ......だ。
相変わらずのマイペースさについていけない。
「ほら、早くおやすみのキスしてよ」
ん、と目を閉じて自分の唇を指さしている圭人。
やっぱり、聞き間違いなんかじゃなかったらしい。
この、綺麗な顔にイタズラをしたくなる。
目を閉じている今なら、何をしてもバレないかな?
さっきの仕返しじゃないけど、私もほっぺを引っ張ってみようと、そーっと圭人の顔に手を伸ばす。
ほっぺまであと1センチーーという所で、圭人の目がバチッと開いた。
「あっ......」
私は、伸ばしていた腕を慌てて引っ込めようとする。
「いったい、何をしようとしていたのかな?」
気づいた時には、もう遅いーー。
私の腕は、身体の横に戻ってくる前に、圭人の手に捕まった。
言葉は優しいけれど、黒い笑顔に思わず逃げそうになる。
「な、なんでもない!」