おやすみのキスがないと眠れない。
「そんな事言って......」
圭人は、みんなの視線なんて物ともせず、立ち上がって、屈むように私に顔を近づけた。
席が隣とはいえ、通路を挟んでいるため、ここまで近づくには立ち上がらないと行けないけれど、これは近すぎだ。
10センチもない距離で、私は圭人から目が逸らせない。
「みんなに、俺の物って知ってもらうために、キスでもしとく?」
「......っ!?」
何を言ってるの?みんなの前でキス?ありえない。
そんなに恥ずかしいことできるわけが無い。
ゆっくりと目を閉じて近づいてくる圭人の顔。
ーー相変わらず、綺麗。
「って、ちょっと待って!」
触れ合う寸前のところで、グイッと肩を押して顔を背けた。
「ーーなに、陽葵の癖に拒否するなんて、生意気」
「するよ!するに決まってるじゃん!みんなに見られてるし、付き合ってるわけでもないんだから」
危うく、流されるところだった。