おやすみのキスがないと眠れない。
3.傘と告白
ジメジメとした空気が、私の気分を下げていく。
外では雨が降っていて、これから帰ると言うのに、憂鬱な気分になった。
さっきまで、晴れていたのにーー。
「陽葵、帰ろう」
顔を上げると、帰り支度をした圭人が居た。
手には折りたたみ傘を持っている。
朝は晴れていたから、大きい傘はないので、私も折りたたみ傘だ。
「う、うん」
私も帰り支度を急いでして、立ち上がった。
実は、あの授業の出来事以来、私は圭人の顔を見るだけでもドキドキしてしまい、まともに顔を見れていなかった。
だけど、いつも通り登下校は一緒だし、お昼も一緒に食べている。
ただ、私がおかしな気持ちになっているだけーー。
今までは、普通に接することが出来ていたのに。
「ねぇ、最近変じゃない?」
「えっ?そ、そんなことないよ。ほら行こう」
鳴り止まない心臓の鼓動を隠しながら、圭人を促して、教室を出る。
「ーーやっぱり変」
私の後ろから聞こえたその声には、聞こえないふりをする。