おやすみのキスがないと眠れない。
その前に壊れたとしても、それを持ってくるのもおかしい。
「だから、傘貸して?俺が持つから」
そう言った圭人に、私が持っていた傘はあっという間に奪われた。
「ちょっと、返してよ!」
「いいから。陽葵が持ったら俺の背に合わせるの大変でしょ?」
確かに、身長差があるので、私が持っていたら腕がプルプルしてきちゃう。
そんな、些細な気遣いを感じて嬉しくなる。
でも、傘持ってるはずなのに、なんでこんなことをーー。
「ほら、陽葵帰るよ。早く入って」
圭人は、わざとらしく私が入るスペースを開けている。
なんだか、ここまでされては、断りにくい。
それに、圭人と相合傘が出来る機会なんて、滅多にない。
ここは、圭人の嘘に付き合うのも悪くはない気がするーー。
しょうがないなと思いながらも、私は圭人の隣に立った。
「そんなに離れてたら、濡れるでしょ?もっとこっち来て」
私と圭人の間が、少し空いていたのに、一瞬で引き寄せられた。
「っ......!」