おやすみのキスがないと眠れない。


その前に壊れたとしても、それを持ってくるのもおかしい。



「だから、傘貸して?俺が持つから」



そう言った圭人に、私が持っていた傘はあっという間に奪われた。



「ちょっと、返してよ!」


「いいから。陽葵が持ったら俺の背に合わせるの大変でしょ?」



確かに、身長差があるので、私が持っていたら腕がプルプルしてきちゃう。


そんな、些細な気遣いを感じて嬉しくなる。


でも、傘持ってるはずなのに、なんでこんなことをーー。



「ほら、陽葵帰るよ。早く入って」



圭人は、わざとらしく私が入るスペースを開けている。


なんだか、ここまでされては、断りにくい。


それに、圭人と相合傘が出来る機会なんて、滅多にない。


ここは、圭人の嘘に付き合うのも悪くはない気がするーー。


しょうがないなと思いながらも、私は圭人の隣に立った。



「そんなに離れてたら、濡れるでしょ?もっとこっち来て」



私と圭人の間が、少し空いていたのに、一瞬で引き寄せられた。



「っ......!」


< 24 / 36 >

この作品をシェア

pagetop