おやすみのキスがないと眠れない。
こんなに近くになったらーー、赤くなっていく顔を隠せない。
歩きながら、時々触れる右肩から、熱が伝わって居ないか心配だ。
「大丈夫?濡れてない?」
「だ、大丈夫っ!」
私だけが意識しすぎて、おかしくなりそう。
圭人を相手に、こんなにドキドキするなんて思ってもいなかった。
それに、さりげなく、私に歩幅を合わせてくれている。
きっと、こんな雨だし、早く帰りたいはずなのに。
「あ、危ない」
そう言われて、圭人は私を庇うように抱きしめた。
その直後、自転車がすごい勢いで通り過ぎる。
通った時に、ぴしゃっと圭人のズボンに水が跳ねるのが見えた。
ジメジメとした空気に、身体に張り付く制服。
圭人が触れているところから、身体が更に熱くなる。
スリムなのに、しっかりした胸板に護られて、私の心臓は、今までに無いくらいの最高速度で脈打っていた。
「大丈夫?陽葵濡れてない?」
ただでさえ、近いのに、覗きこまれた私は、顔まで熱くなる。