おやすみのキスがないと眠れない。
寝る前とか、こないだの授業の時とか、キスする?って言われたけれど、ただ、からかっているだけだと思っていた。
「せっかく、必死に我慢していたのに、まさか陽葵から来てくれるとはね......」
「あ、あ、あの......け、圭人?」
傘を持っているはずなのに、片手で器用に私の顔を固定している圭人。
この雰囲気は、あぶないーー。
そう思ったのに、圭人の瞳からは逃げられなかった。
「陽葵、ちょっと黙ってて」
そう言われた直後、私の唇は塞がれた。
初めは、何が起きたのかわからなかったけれど、圭人のドアップと、唇に当たる柔らかい感触に、キスされてるんだと分かった。
「んっ......」
たぶん、触れていたのは数秒だった。
だけど、私には1分以上はあったんじゃないかと感じるほど長いかったけれどーー。
チュッとリップ音を立てて離れた時には、一気に顔が熱くなった。
鏡を見なくても、真っ赤になっていることが分かる。
ーーファーストキス......。