おやすみのキスがないと眠れない。
ずっと、俯いている訳にも行かないし......。
「顔見せるなっていうのは、無理じゃない?私、外に出られなくなっちゃうじゃん」
そのお願いは聞けないなと思って、言ったのだけれど、何故か圭人はびっくりしたように固まっていた。
「ーーそういう事じゃないんだけど......」
「えっ?」
「いや、なんでもない。陽葵の天然さを再確認しただけだ」
天然?天然石みたいな?ーーどういうことだろう。
私は石じゃなくて、人間なのに。
「はぁ......そういう所だよ」
「ん?」
訳が分からない。
私がおかしいの?圭人は呆れたような顔してるし......。
「それよりもさぁ、俺が言ったこと忘れてない?」
いつの間にか、石の話になっていた。
圭人が言ったことってなんだったっけ?頭の中の記憶を思い返してみる。
“ねぇ、おやすみのキスは?”
「あっ!」
「思い出してくれた?」
しっかりと、頭にインプットされていたその言葉を思い出して、私の顔は熱くなった。