おやすみのキスがないと眠れない。



「はぁ、いい抱き枕だ。よく眠れそう」


「ちょっ!離してよ」



がっちりと閉められた腕からは、逃れられない。


それに、なぜ私のベットで寝ようとしているのだ。


私は流されないんだから。


ここは私の部屋で、今は私のベットの上に居る。


お風呂から戻ってきた時に、既に部屋の中にいた圭人がおかしいのだ。


私はただ、自分の部屋に戻ってきただけなのに......。



「こら、暴れないで大人しくしてて」



更にキツく、だけど優しく抱きしめられた。


そんな行動にドキドキと胸が高鳴る。そう言われたら、逃げられないじゃないか。


逃げるに逃げられないこの状況で、素直に腕に収まった私。



「ん、いい子」



今度は、甘い声で囁かれて頭をポンポンされる。


ーー心臓が、はち切れそう。



「おやすみ」



その数分後には、圭人の規則正しい寝息が聞こえてきた。


もうーー、こんな状況で、どうやって寝ろと言うのだ。


全て、圭人のペースに持っていかれた気がする。

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